18日に発生した大阪北部地震は、5人の死亡者が出るなど大きな災害となった。気象庁は余震に注意するよう呼びかけている。自治体や住民の対応などについて、「防災士」の資格を持つ災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏に話を聞いた。
――今回、大阪市北区、大阪・高槻市、枚方市、茨木市、箕面市で震度6弱が観測されましたが、同じ関西圏ということもあり、直下型で震度7だった阪神・淡路大震災を思い起こさせる。
和田隆昌氏(以下、和田) 震度6弱といっても、実際の揺れには被害の程度に幅があり、鳥取で震度6弱の地震が発生した際には死者が出ていない。近年の建築物なら、震度5強から6弱では家屋は全壊する可能性は低く、そのあたりが阪神・淡路とは決定的に違う。
今回の特徴は、震源地が浅いことと、揺れの大きいエリアが局地的だったということ。広い範囲で大災害にはならなかった。今回は、家屋の倒壊による死者は発生せず、亡くなった方は、家屋内の本棚やブロック塀の倒壊が原因だった。大阪では記録上最大の震度だったが、今後、今回以上の地震が発生しないという保証はない。これだけ大きな地震が起きたということは、地震を発生させる要因があったと考えるべき。よく、エネルギーが放出されたから大丈夫じゃないかと言う人がいるが、大きな間違いだ。
――気象庁は余震の可能性を指摘している。
和田 原因があるところには、その後も大きな地震が起きる可能性がある。熊本では短い周期で大きな地震が発生した。あの短い周期で、一旦避難して戻った人が被災している。家屋に亀裂が入っていたりすることが多いので、すぐには戻らず、しっかり検査してから家に戻ることが大切だ。
木造家屋で旧耐震のものは、かなりリスクがある。どこかに亀裂が見つかったとか、ヘンな音がするということがあれば、避難所で様子を見ながら戻らないほうがいい。いつまで、と明言できないが、もっともリスクが高いのは地震発生後1週間といわれるが、それが過ぎたなら絶対に安全とはいえない。
――今回はブロック塀が倒れて犠牲者が出た。1978年の宮城県沖地震で18人がブロック塀などの下敷きになって亡くなったことを契機に、3年後に建築基準法施工例が改正され、ブロック塀の規制が強化された。
和田 ブロック塀については、建築基準法で中に入れる鉄筋について細かい規定があり、違反しているのがわかっていても放置しているケースはいくらでもある。自治体が罰則を適用しなければ、ザル法になってしまう。下町などを歩いていると、古い家屋では、ほとんどはそのままになっている。熊本でも石積みの壁の家屋がたくさんあった。石を単純に上に乗せていくだけのものだ。崩れないのがおかしいくらいだし、熊本城でさえ崩れた。
●木造密集家屋の不燃化対策
――今後、行政や自治体がやるべきことは何か。
和田 大都市では木造密集家屋の不燃化対策だ。旧耐震の家屋を新耐震に変えていかなければならないが、補助金が必要だ。自治体ではどこに被害が集中しそうなのかわかっている。阪神・淡路がそうだったように、地震のときの火災は同時多発的に起きるケースが多い。家が倒壊したら、道路は使えない。地震が起きたら消防車が入れなくなる地域がたくさんある。現実的には燃えっぱなしになって、燃え尽きるのを待つだけになってしまうだろう。
今回は大阪府北部を中心にガスの供給停止や断水が続いた。耐震管への交換が行き届いてなかったのではないか。今はある程度の地殻変動で多少曲がっても断裂せずに機能が低下しないガス管や水道管がある。自治体としては今後、早めに交換する必要がある。
――新潟県中越地震(04年)、東日本大震災(11年)、熊本地震(16年)など、多くの犠牲者が出る大きな地震が10年たたずに起きている。
和田 ほとんどの専門家は、より大きな地震災害が起きる切迫した状態にあると認識している。海溝型地震が東北や千葉沖、北海道沖で起きており、日本列島全体に大地震の前兆が見られる。内陸での地震はめったにないといわれながらも、全体的な地殻変動の結果として内陸でいくつも地震が起きている。大災害を起こす地震が頻繁に起きる時期に入っているが、気象庁も政府もあまりアナウンスしていない。今回のように意識できるときに対策を打たないと防災は進まない。今回の地震も警告だと思わないといけない。
●国や自治体のハザードマップを確認
――大阪の地震を教訓として、個人としてすべきことは何か。
和田 自分の生活圏のリスクを確認しておくことだ。日常生活では気づかないが、危険性をはらんだ場所は至る所にある。石積みの外壁のビルや、看板が落ちそうになっているところなど、こういう機会に通学路や通勤路など自分がふだん歩くコースで気をつけて見てほしい。
見落としがちなのは、例えばアーケード街がそうだ。アーケードには耐震基準がない。阪神・淡路も熊本でも、アーケードはかなり被害があった。ブロック塀も色つきのプリントが貼ってあったりするので、よく見ないとわからないかもしれない。空き家は管理されていないので、かなり危ない。電気が止まっていれば漏電の危険性はないが、放火の可能性もある。国や自治体が出しているハザードマップは有効であり、もっとも身近な手段だ。
(構成=横山渉/ジャーナリスト)