2020年も暑さや大雨など「観測史上1位」や「観測史上最大」が続出した年でした。2020年はどんな年だったか、気象データを元に1年を振り返ります。 ■観測史上もっとも暖かく、雪の少ない冬 2019年~2020年にかけての冬は、なかなか冬型の気圧配置にならず寒気の流入も弱かったため、平均気温は東日本と西日本で平年より2℃以上高く、観測史上もっとも暖かい冬となりました。また雪も少なく、北日本や東日本の日本海側では降雪量が観測史上もっとも少なくなりました。記録的な雪不足で営業できないスキー場もありました。 1月4日、東京で平年より1日遅い初雪を観測しました。西日本を中心に初雪が平年より遅くなったところが多く、京都、岡山、松山では最も遅い初雪の記録になりました。 2月、名古屋、岐阜、和歌山、広島、下関、福岡、大分、長崎、熊本でも観測開始以来もっとも遅い初雪を観測。また9日には強烈な寒気が入り、北海道の旭川市江丹別では-36.0℃と、19年ぶりとなる強烈な冷え込みを観測しました。 一方で、2月は暖かい空気に覆われた日も多く、東京都心では最高気温が15℃以上となった日が10日もあり、2月としては過去最多となりました。
■桜開花を早める暖かな春
3月14日には東京で観測史上もっとも早いソメイヨシノの開花が発表されました。記録的な暖冬や開花前日まで連日20℃前後の暖かさになったことが影響したものとみられます。ただ、開花当日は東京都心でも雪が降る、凍える寒さの中での開花発表となりました。 3月は北日本・西日本を中心に平均気温が平年より2℃以上高くなりました。北日本では3月として1位の記録となりました。この暖かさは桜の開花にも影響し、東京のほか前橋、仙台、福島、山形、金沢で観測開始以来もっとも早い桜の開花となりました。 一方、鹿児島では4月1日、平年より6日遅いソメイヨシノの開花。さらに、満開は平年より15日遅く、観測史上もっとも遅い記録となりました。 4月13日、発達した低気圧が南岸を東進、関東・東海などで大雨が降り、東京都心では24時間降水量が132ミリと、4月としては1位の記録となりました。 ■季節外れの暑さと遅い梅雨明け 5月1日、東京都心で今年初めての25.5℃の夏日を観測。5月は東京都心で25℃以上の夏日となった日が17日もあり、季節外れの暑さとなりました。12日、台風1号発生。4年ぶりに遅い台風が発生しました。 6月は、上旬を中心に高気圧に覆われて晴れの日が多くなりました。6月の平均気温は、東日本では平年比+1.9℃と、統計開始以来1位の高温になりました。西日本でも+1.4℃で、2005年と並びもっとも高温でした。 (梅雨入り) 5月16日-沖縄、17日-奄美、30日-九州南部 6月10日-四国、中国地方、近畿、東海 6月11日-九州北部、関東甲信、北陸、東北南部 6月25日-東北北部 全国的に平年並み~遅い梅雨入りで、東北北部ではかなり遅い梅雨入りでした。 (梅雨明け) 6月12日-沖縄 7月20日-奄美、28日-九州南部、29日-四国、30日-九州北部、31日-中国地方 8月1日-近畿、東海、関東甲信、北陸、2日-東北南部 東北北部は梅雨明け特定できず。 関東甲信で8月に梅雨明けとなったのは13年ぶりのことでした。
活発な梅雨前線の影響で、東・西日本を中心に各地で長期間にわたって大雨「令和2年7月豪雨」となりました。東日本太平洋側と西日本では、7月として統計開始以来最大の雨でした。雨と日照不足の影響で野菜の高騰が続きました。 7月4日、鹿児島、熊本に大雨特別警報発表。線状降水帯がかかり熊本を流れる球磨川で氾濫が発生。特別養護老人ホームが浸水し、施設内にいた入所者が多数犠牲になりました。 6日、福岡、長崎、佐賀に大雨特別警報発表。福岡・彦山川で氾濫発生。 7日、大分・筑後川で氾濫発生。福岡・大牟田市や大分・日田市などで住宅浸水や土砂崩れが発生し、犠牲者が出ました。 8日、岐阜、長野に大雨特別警報発表。岐阜・飛騨川で氾濫発生。 14日、島根・江の川で氾濫発生。 29日、活発な梅雨前線が停滞し大雨、山形・最上川中流で氾濫発生。 7月3日~31日の雨量は、 高知・馬路村 魚梁瀬-2032.5ミリ 長野・御嶽山-2135.5ミリ 大分・日田-1714.5ミリ 鹿児島・鹿屋-1390.0ミリ となり、平年の7月の降水量の4倍を超える地点もありました。
■記録的に暑い夏
東日本では8月の平均気温が平年より2.1℃高く、1946年の統計開始以来、8月としてはもっとも高温になりました。西日本でも平年より1.7℃高く、8月の平均気温としては2010年に並ぶ高温となりました。コロナ禍で、猛暑の中マスクをつけての生活は過酷でした。 また、8月は日本の南を中心とした海域の海面水温が平年と比べかなり高く、特に関東南東方、四国・東海沖、沖縄の東では解析値の残っている1982年以降、もっとも高くなりました。 8月6日、東京、千葉、茨城に熱中症警戒アラートが発表されました。熱中症警戒アラートは今年の7月から関東甲信地方で試験的に運用が始まり、これが初めての発表となりました。 17日、静岡・浜松で最高気温41.1℃を観測。2018年の熊谷の記録に並び、日本歴代最高記録となりました。また東京都心では8月に猛暑日となった日が11日もあり、この日数は過去最多となりました。
■台風10号と台風14号
9月2日、「台風10号が特別警報級の勢力まで発達し奄美地方から西日本に接近・上陸のおそれ」と気象庁は早めの備えを呼びかけました。台風10号は非常に強い勢力で九州に接近しましたが、特別警報は発表されませんでした。10月10日、台風14号が直撃した伊豆諸島南部に大雨特別警報が発表されました。 2020年は台風が日本に上陸しませんでした。台風が上陸しなかったのは12年ぶりのことです。過去には1984年、1986年、2000年、2008年も上陸しませんでした(1951年以降)。 また、暑さも続く秋でした。9月3日には、台風9号の影響で日本海側にフェーン現象発生し、新潟・三条で40.4℃ を観測、9月として初めての40℃超えを記録しました。11月17日から20日にかけて、11月の1位の暖かさが更新続々、長崎、佐賀、鳥取、米子、松江、富山、福井などで、最も遅い夏日(25℃以上)が観測されました。
■記録的な大雪で車が立ち往生
12月15から17日、群馬と新潟で記録的な大雪。48時間降雪量は群馬・みなかみ町 藤原で199センチ、新潟・湯沢で144センチと、観測史上1位の大雪となりました。17日には、この「ドカ雪」の影響で、関越自動車道などで車が立ち往生しました。 ■2021年から生物季節観測が縮小 気象庁は、生物季節観測を大幅に縮小します。2021年からは、セミや鳥の初鳴きなど虫や動物の観測をやめるということです。植物に関してもウメ、サクラ、アジサイ、イチョウ、カエデ、ススキは継続するものの、その他は観測をしないことを発表しています。 記録的な暑さや大雨、台風の接近、大雪など、私たちの生活や命を脅かす気象現象がテレビやネットで報道された一年でした。また、コロナ禍もあり密を避けるため避難所に入らず「ホテル避難」という新たな行動も始まりました。情報があふれる中、自分や大切な人の命をどう守るのか考えさせられる一年でした。「災害のない年はない」何かあったときに、どう命を守るのか、巣ごもりの年末年始の時間を使って、家族で話し合いましょう。