2024年3月、2つの国際ランキングが発表された。国連開発計画(UNDP)の「人間開発指数(HDI)」と、こちらも国連の「世界幸福度報告書」だ。いずれも、豊かさや幸せの度合いを国・地域ごとに評価して順位づけしたもので、日本は低位に甘んじている。 【ランキング】日本は何位?国連などが発表している「豊かさ」や「幸福度」などのランキング 日本国内での「生きづらさ」を感じてか、日本人の海外移住者は増える傾向にある。外務省によると、2023年10月1日時点で日本人の海外永住者は過去最高の約57万人だった。日本の豊かさや幸せの度合いはいかほどか。国際機関が公表しているさまざまなランキングから見てみよう。 (杉原健治:フリーライター) >>4つのランキングを表で見る ■ 国民の豊かさを示す「人間開発指数」 2024年3月13日に、国連開発計画(UNDP)が「人間開発指数(HDI)」について最新の報告書を発表した。名前だけを見ると少し不気味な印象を受けるかもしれないが、これは国民の所得や教育水準、平均寿命をもとに算出されたその国の豊かさを示すものだ。 今回の発表では1位がスイス、2位がノルウェー、3位がアイスランドという結果に。前回の調査で日本は22位だったが、残念ながら今回は193カ国中24位に後退している。 この指数を出している国連の「国連開発計画」とは、「貧困や格差、気候変動といった不公正に終止符を打つために闘う国連の主要機関」と位置付けられており、170カ国で活動している。 ちなみに日本は同機関の最大支援国のひとつでもある。2022年の日本からの拠出金は合計3億883万ドルで、単独国としては世界トップだった。
■ 「ジェンダー不平等指数」トップはデンマークで日本は何位? 「幸せな国」の定義には男女の平等も重要なポイントだ。国連開発計画が出している他の指標には、2010年から公表している「ジェンダー不平等指数(GII)」というものもある。この指標では、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、エンパワーメント、労働市場における男女間の不平等を評価している。 0~1の数字で表され、0は男女が完全に平等、1に近づくほど不平等が大きくなる。2022年のジェンダー不平等指数で、日本は0.078で193カ国中22位。1位は0.009のデンマーク、2位以降はノルウェー(0.012)、スイス(0.018)と続いた。 ■ 「ジェンダーギャップ指数」日本は過去最低 よく聞く男女平等に関する指標といえば、「ジェンダーギャップ指数(GGI)」だろう。こちらは世界経済フォーラム(WEF)が発表している指標だ。世界中の要人が集まる通称「ダボス会議」を主催していることで有名な世界経済フォーラムも、ビジネスだけではなく社会課題の解決に向けた提言をしている国際的な機関と言える。 世界経済フォーラムが発表しているジェンダーギャップ指数も0~1で示される。ただし、ジェンダーギャップ指数は0に近いほど不平等が大きく、前出のジェンダー不平等指数とは逆となる。 ジェンダーギャップ指数は「経済」「教育」「健康」「政治」の4分野で評価している。2023年に発表された日本のジェンダーギャップ指数は0.647で146カ国中125位と過去最低だった。特に、政治分野での不平等が大きい。 トップはアイスランド(0.912)、ノルウェー(0.879)、フィンランド(0.863)だった。
■ 「世界幸福度ランキング」日本はG7で最下位 そのものずばり、「幸福度」を評価している調査もある。国連の「SDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)」という研究組織が発表している「世界幸福度報告書」だ。その報告書の中にある幸福度ランキングでも、順位の変動は常に注目を集めている。 このランキングは対象国での世論調査をもとに、0~10の11段階で各国の幸福度を測定するというもの。0が完全に不満で10が完全に満足となる。 2024年3月20日に発表されたランキングでは、日本が51位で昨年の47位より後退し、主要7カ国(G7)の中で最下位となった。1位は7年連続でフィンランド、以降はデンマーク、アイスランドと続いた。 各ランキングのトップを占めた北欧諸国は、ジェンダー平等が進み女性の社会進出が目立つ。フィンランドでは2019年に当時34歳のサンナ・マリン氏が世界最年少で首相となり話題になった(現在の首相は男性のペッテリ・オルポ氏。他方、日本の衆議院議員に占める女性の割合は10%ほどだ。 また、経済分野でも日本の男女不平等は根深い。世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数では、日本は政治分野に次いで経済分野での不平等が大きい。特に、最近では男女間の賃金格差の問題に光が当たり始めている。ちなみに、アイスランドでは2018年に男女の賃金格差を法律で禁止する法律が施行された。 今後、日本が「幸せな国」になるためには何が必要だろうか。そもそも、「幸せ」のモノサシは人それぞれなので、国や地域ごとにランキングする意味がどこにあるのかという疑問も抱く人もいるに違いない。 だが、少なくとも理不尽な格差が生じていないかを検証し、改善していくためには、こうしたランキングで日本が置かれている状況を相対化し、冷静に見つめ直すことも大切だろう。 >>4つのランキングを表で見る