【復興ロードの行方 三陸道・仙台―気仙沼直結3】2本の「横軸」待たれる整備

三陸沿岸道(仙台-八戸、359キロ)は、文字通り三陸沿岸を南北に走る「縦」の大動脈だ。東日本大震災の発生時、この道路で仙台市と直結する区間の北端は宮城県登米市だった。同県気仙沼市で縦の動脈だった国道45号は津波で各所が寸断し、大半が通行不能となった。

 国や県から支援物資が届くまでの数日間、「命の道」になったのは内陸部に続く「横」の道、国道284号だ。市の物資調達班は連日、現金を握りしめ岩手県一関市や奥州市、宮城県栗原市などへ車を走らせた。
 当時、災害対策本部で住民支援などに当たった市危機管理課の鈴木秀光課長補佐(48)は「284号がなければ、300人の避難者に100人分の食料しか提供できないような状況だった」と振り返る。自衛隊や全国から訪れるボランティアの多くも、284号を通り気仙沼に入った。
 震災は、主要道路を補完するリダンダンシー(代替路線)の重要性を浮き彫りにした。国は東北自動車道と三陸道という2本の縦軸をつなぐ横軸の自動車専用道路を「復興支援道路」と位置付け、岩手、宮城、福島で4路線計215キロの整備を進める。

 「気仙沼は復興支援道路の空白地帯」。気仙沼市の伊東秋広計画・調整課長(51)は深く憂慮する。花巻市-釜石市の東北横断道釜石秋田線(80キロ)より南は、栗原市-登米市のみやぎ県北高速幹線道路(24キロ)まで高規格・地域高規格道路がない。気仙沼は、ほぼその中央に位置する。
 震災前から順次、バイパス整備が進む284号も、緊急時の輸送路としての信頼性は盤石ではない。整備対象外の区間にも、狭い道幅や急カーブが目立つ。バイパス周辺に飲食や商業施設が集積した地区では、頻繁な信号待ちによる混雑もしばしば起こる。
 気仙沼市は一関市、平泉町とともに国や岩手、宮城両県に284号の高規格化を要望している。特に、総延長の9割以上を占める岩手県の協力は不可欠だ。
 伊東課長は「三陸道が延伸し、次の段階として質の高い代替路線が必要だ。周辺自治体とも連携を図り整備を求める」と話す。

 気仙沼ではもう一つ、「次の段階」の横軸整備を望む声が強くある。仙台市中心部と三陸道を結ぶアクセスの向上だ。仙台で渋滞に出くわせば、高速道直結の効果が大きく損なわれる。
 仙台では三陸道南端から続く仙台東部道路と、仙台市中心部を自動車専用道路でつなぐ「仙台東道路」構想が加速する。
 東道路構想は1990年代前半に浮上したが、計画は進まなかった。しかし震災後、村井嘉浩知事が復興事業の目玉の一つとして再び打ち出した。
 2月にあった、構想を巡る国の有識者委員会で、東部道路と仙台西道路を直結する案が了承された。東北地方整備局は具体的なルートや、高架・トンネルなど道路構造の検討を進める。
 東北大災害科学国際研究所の奥村誠教授(58)=交通計画=は「仙台市中心部が混み合えば、定時性や確実性が担保できない。横軸整備が三陸道延伸の効果をより高める」と指摘する。

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