【日韓対立】日韓企業62%「実害を懸念」[経済] 収束見通し、日系が悲観的見方

【前編】日韓関係の悪化を受けて、NNAと韓国紙・亜洲経済新聞は両国でビジネス展開する企業(在韓日本企業64社、在日韓国企業74社)への影響についてアンケート調査した。その結果、日韓企業の61.6%が「実害は避けられない」とみていることが分かった。事態収束の見通しについては、日系企業の5割が「来年以降も続く」と回答するなど、韓国企業より悲観的に見ている。

日本政府が7月1日に半導体素材3品目について韓国への輸出管理強化を発表してから、1カ月半が過ぎた。日本政府は「安全保障上の措置」としたが、韓国側は元徴用工訴訟問題への「経済的報復」として対抗。日本が韓国を「ホワイト国(優遇対象国)」から除外すると発表したのに対し、韓国も同じく日本をホワイト国から外すと決定するなど、対抗措置の応酬となりつつある。

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■日系:「ボイコット」や国産化を注視

今回の日韓対立による「ビジネスへの影響」を尋ねた質問に対しては、日系企業の12.5%が「すでに実害が出ている」と回答。「実害が出る恐れがある」も56.3%に上った。「影響なし」は31.2%だった。

すでに出ている実害としては、「不買運動の対象になっている」(製造)や「日韓交流を目的とした団体のキャンセルが出ている」(運輸)などの声が寄せられた。小売りや観光業界を中心に続く日本製品を買わない、日本に行かないという「ボイコット・ジャパン」運動の影響が出いている。

日本による韓国のホワイト国除外の決定後、韓国政府はいち早い対応として部材の調達先の多角化とともに、100の戦略品目について5年以内の「脱日本依存」を推進すると発表。フッ化水素など調達が困難になる可能性のある20品目については1年以内の国産化を達成する計画としている。現実的には難しい品目が多いとの見方が多いが、当事者である日本企業としてはその動きを注視しているようだ。

今回の回答の中にも「(韓国メーカーによる)国産化を進めている」(卸売業)、「素材の『脱日本化』が少しずつ進むと予測している」(電子素材製造)など、韓国企業の動きに危機感を覚えるとの回答が目立った。 © 株式会社NNA

■韓国:観光・航空でブーメラン

韓国企業では、「影響なし」は44.6%と日本より多いものの、10.8%が「すでに実害が出ている」、44.6%が「実害が出る恐れがある」と回答。やはり日韓対立でビジネスへの影響を懸念する声は高まっているようだ。

韓国企業で「すでに実害が出ている」との回答が最も多かったのは観光・航空業界。韓国でのボイコット運動が韓国企業に打撃を与えているという構図で、「間接的な被害を被っている」との答えが多かった。とりわけ、各航空会社が軒並み売り上げを下げている。

今後については「日本の輸出管理の強化やホワイト国除外による影響拡大」を懸念する声が多い。韓国企業による素材調達先の多様化の動きについては、「日本と取引するよりコストがかかるため、損失が発生するのではないか」との見方もある。

■事態の見通しは日系が「悲観的」

両国の主張はまったくかみ合わず、対立を解決する糸口は見えていない。それを反映するかのように、今回の事態がいつまで続くかという質問について日系企業は「来年以降も続く」(48.4%)が最も多かった。

長期化の理由としては「今回は出口が見えない気がする」(電気・電子商社)、「落としどころが見えず、先行きがかなり不透明」(製造業)などが挙がった。

これに対し、韓国企業で最も多かったのは「数カ月は続く」で55.4%。事態のゆくえについては、在韓日系企業よりもやや楽観的に見ている。 © 株式会社NNA

■日韓ともビジネス展開は「様子見」

日系企業の韓国ビジネスの今後の展開については、「当初の計画通りに展開」が32.8%、「しばらくは様子見を続ける」が60.9%と、先行き不透明感は高まっているものの、当面は経営方針を大きく変えないとの意見が9割以上に上った。ただ、「人員削減など縮小も検討」は3社、「韓国市場からの撤退も視野」も1社あった。

当面の対応としては、「現時点では具体的な対策はない」や「冷静に推移を見守るのみ」といった静観する姿勢が目立つ。不買運動の過熱もあり、広告やイベントの実施、新商品の発売などはできるだけ先延ばしし、今は粛々と目の前の仕事に集中するほかないとの立場だ。

韓国企業の日本でのビジネスの展開も、日本とほぼ同じ反応だった。「しばらくは様子見を続ける」が67.6%で最も多く、次が「当初の計画通り展開」(31.1%)だった。韓国の場合、現時点で「日本市場からの撤退も視野」と回答した企業はゼロだった。

今後も、日本による韓国のホワイト国除外後の反発が予想されるほか、元徴用工訴訟問題に伴う日本企業の資産売却による現金化など、両国がぶつかる要素は多々ある。その中で企業としてはどう乗り切るかに力点を置いて事業展開せざるを得ないようだ。

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