【歴史戦】国連事務総長の抗日行事出席 「母国向けのパフォーマンス」 身内からも批判の声

【ニューヨーク=黒沢潤】国連の潘(パン)基文(ギムン)事務総長が今月3日、中国の軍事パレードを含む抗日戦争勝利70年記念行事に出席したことに、有識者ら国連周辺から批判の声が出ている。

国連の「中立」にそぐわないだけでなく、母国・韓国向けの「政治パフォーマンス」に利用した側面もあるとみられるためだ。

国連研究で知られる米コロンビア大のアンドリュー・ネイサン教授(政治学)は潘氏の行事出席について、「国連は第2次世界大戦後、戦争の勝者のみならず世 界の国々を代表する機関として創設された。国連が戦争の一方の側の記念行事に関与すべきではない」と批判。また、一党独裁国家が最新兵器を披露する場とも なった軍事パレードへの出席について、「パレードは高度に政治化され、勝利主義、愛国主義、軍事強大主義を体現したものだ。事務総長としてたしなめるべき であり、鼓舞すべきものではない」と強調した。

米ニューヨーク大のジェローム・コーエン教授(法学)も、「(安保理常任理事国という)国 連内の中国の存在感を考えた場合、行事出席は避けられなかったかもしれない」と述べつつも、「潘氏は(北京滞在中に)中国の大気汚染や(南シナ海での)紛 争、サイバー攻撃、人権弾圧といった諸問題に関して、公的に声明を発表すべきではなかったか」と、事務総長としての資質に疑問を呈した。

日本側は潘氏の抗日記念行事出席について「懸念」の意を表明していたが、潘氏は出席を強行した。

欧米の首脳は軒並み欠席。欧州連合(EU)から唯一チェコのゼマン大統領が参加を決めた際、北京駐在のハンス・シュバイスグートEU大使は「この種の軍事パレードには、いつも懸念が伴うということを人々は理解する必要がある」と苦言を呈していた。

さらに、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているスーダンのバシル大統領らとともに、潘氏がパレードを参観したことを疑問視する声も、国連職員から出ている。

また、ある国連高官は、潘氏が抗日記念行事への参加と母国での“政治的野心”を結びつけた可能性を指摘。「韓国の大統領職に意欲を示しているとされる潘氏 をめぐっては実際、(中国滞在中に)韓国内で好意的に報道されていた」と述べ、潘氏が事務総長職を母国での“PR”に事実上利用したのではないかとの見方 を示した。

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