慰安婦像と碑の公共物化をめぐり、13日、米サンフランシスコ市との姉妹都市関係の「年内解消」に言及した吉村洋文大阪市長。
産経新聞の単独インタビューでは「姉妹都市というカウンターパートとして、『受け入れられない』と明確な意思表示をしなければならない」と強調。「国際社会では、黙っていれば認めたと受け取られる」と国や他都市にも警鐘を鳴らした。14日(日本時間15日)のサ市議会で在米中国系民間団体からの像や碑の寄贈受け入れ決議を可決し、24日(同25日)の期限までにエドウィン・M・リー市長が拒否権を行使しなければ、サ市として正式な受け入れが決まることになる。
「性的に奴隷化」「何十万人」「捕らわれの身のまま亡くなった」…碑文は不確かな主張
吉村市長は碑文にある「性的に奴隷化」という表現「(被害者が)何十万人」という数字、「戦時中の捕らわれの身のまま亡くなった」という3点について、「歴史家の間でも見解が一致せず日本政府の見解などとも違う不確かな主張を一方的に真実かのように記している」と指摘。「僕自身の歴史認識とも異なる」とした。
また、国際社会で互いに非難し合うことを控えることなどで合意した、平成27年の慰安婦問題に関する日韓合意にも言及。ケリー米国務長官(当時)ら政府高官が「国際社会に合意を支持するよう求める」と述べるなど、米国も合意の内容を尊重する立場であり、「サ市が碑や慰安婦像を展開するのは、米連邦政府の方針と違う」とも指摘した。
大阪市議会の議決否決、「設置を認めたかのように国際社会に受け取られる」
外交問題は国の専権事項であり、自治体が個別に動くべきではないという意見に対しては、「国や州が行うことならば僕は何も言わないが、大阪市はサ市の姉妹都市としてカウンターパートである以上、当然、意思表示しなければいけない問題」と反論。特にサ市では「市議会が積極的に、慰安婦像の受け入れについてリー市長の後押しをしている」と指摘した。
また、大阪市議会が2度にわたり慰安婦像の設置の再検討をサ市に求める議決を否決したことを、「慰安婦像と碑の設置を認めたかのように国際社会に受け取られる。非常に残念」と述べた。
姉妹都市より像優先のサ市 「このままいけば信頼関係はお互いになくなる」
姉妹都市解消の代わりに一時的な交流停止などの対応を望む意見については、「交流を停止してもその間、慰安婦像は設置され世界へ広められている状態で意味がない」。慰安婦像の設置については橋下徹前市長の時代から懸念を伝えてきたとし、「このままいけばサ市が姉妹都市より像を優先したということになる。信頼関係はお互いになくなる」と述べた。
姉妹都市関係を解消した場合、これまで60年間続いてきた市の事業として行っている節目ごとの記念行事や市長間の交流はなくなる。サ市の姉妹都市協会が主催している高校生の派遣事業などの草の根交流への協力については、「解消したとしても打診があれば支援は続けたい。人と人との交流はできる範囲で支えたい」と述べた。