【水平垂直】エンブレム盗用疑惑で五輪スポンサー困惑…「企業イメージ悪化する」

2020年東京五輪・パラリンピックの公式エンブレム問題が深刻化してきた。

「盗用」を指摘する海外デザイナーの使用差し止め訴訟に加え、エンブレムをデザインした佐野研二郎氏による他作品の「盗用」疑惑が次々と噴出しているため だ。イメージダウンも懸念されており、エンブレムを商品や広告などに使用する公式スポンサー企業からは早期の問題解決を望む声が高まっている。

広告などでのエンブレム使用について「現時点ではスケジュール通りに進行している」(三井不動産)というスポンサー企業が多い。ENEOS(JX日鉱日石 エネルギー)と野村ホールディングス(HD)は22日から、テレビCMで公式エンブレムの使用を始めた。現時点で使用を自粛する動きはないもようだ。

ただ、今後の訴訟の行方次第では、エンブレムの使用が差し止められる恐れもある。それだけに「今は大会組織委員会の判断に沿った形で使用する」(金融系のスポンサー企業)と、状況を注意深く見守る構えだ。

一方インターネット上では、デザインをめぐる疑惑を理由に、スポンサー企業がエンブレムを“撤去”した、とする記事がまことしやかに広まった。だが、当該 企業はもともとホームページ(HP)にエンブレムを掲載していなかった。こうした動向を踏まえ、あいまいな噂が独り歩きすれば「企業イメージの悪化につな がる恐れがある」(スポンサー企業の幹部)と懸念する声もある。

国内スポンサー最高位のゴールドパートナーの場合、100億円以上とされる巨額のスポンサー料が必要だ。これによりエンブレム使用の権利などが得られる。しかし、問題が長期化すれば「エンブレムの使用に積極的になれなくなる」(スポンサー企業首脳)との指摘もある。

法的に問題なくても…

2020年東京五輪のエンブレムをめぐって、ベルギーの劇場のロゴをデザインした同国のデザイナーが「盗用」疑惑を指摘。デザイナー側が、国際オリンピッ ク委員会(IOC)に使用差し止めを求める訴訟にまで発展している。大会組織委員会は7月24日にエンブレムを公表。劇場のロゴデザインを担当したオリビ エ・ドビ氏が27日付のフェイスブックの投稿に「驚くほど似ている」と記した。エンブレムをデザインした佐野研二郎氏は8月5日の記者会見で「全くの事実 無根だ」と否定。組織委も「問題はない」としたが、ドビ氏側は14日、地元ベルギーの裁判所に使用差し止めを求める訴えを起こした。

訴訟 では、佐野氏が劇場のロゴを基にエンブレムを作成したことを、ドビ氏側が立証する必要があり、著作権に詳しい平野泰弘弁理士は「内部告発などよほどのこと がない限り、グレーであっても訴えが認められることはない」とみている。佐野氏は14日、代表を務める事務所のホームページで、複数のデザイナーと共同制 作したサントリービールのキャンペーン商品に、他作品の模倣があったことを認めて謝罪。インターネット上では、佐野氏の他の作品に関しても「盗用」疑惑が 指摘されている。

平野弁理士は「多くの疑惑が出ている佐野氏のデザインした五輪エンブレム。法的に問題がなくても、他国の模倣に厳しい目を向ける日本が、世界から多くを迎え入れる祭典の顔にするのは、いかがなものかと思う」と話している。

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