【独自】じもとHDが有価証券報告書に虚偽記載か 金融商品取引法違反の恐れ

 仙台銀行ときらやか銀行(山形市)を傘下に持つじもとホールディングス(HD、仙台市)が、2017年3月期に導入した役員の「業績連動型株式報酬」に関し、有価証券報告書(有報)などに事実と異なる記載をしていることが21日、分かった。金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の恐れがあり、近く関東財務局に訂正報告書を提出する。(経済部・菊間深哉)

業績連動型株式報酬に関し、事実と異なる記載があった有価証券報告書

[じもとホールディングス(HD)]傘下の仙台銀行ときらやか銀行に注入された計780億円の公的資金のうち、2024年9月末が期限だったきらやか銀の200億円の返済が業績不振で困難になり、国から13年の返済延期が認められた。じもとHDは24年3月期の年間配当を無配としたため、国が保有する優先株に議決権が発生し、現在は実質的に国の管理下にある。24年9月の臨時株主総会で会長と社長が引責辞任した。

役員の「業績連動型株式報酬」に関して無関係な金額

 じもとHDの業績連動型報酬は「連結純利益」を指標にしている。前期(前事業年度)の連結純利益の実績値と、中期経営計画で定めた前期の目標値を比べ、達成率に応じて各役員にポイントを付与する。役員は退任時、たまったポイントを1ポイント当たり1株として、じもとHD株を受け取る。

 各期に付与する具体的なポイント数など実際の報酬額は、じもとHDの会長と社長、社外取締役2人の計4人でつくる指名・報酬協議会への諮問を経て、取締役会で正式決定される。

 事実と異なる記載があるのは表の通り。19年3月期と20年3月期の有報には、純利益の目標や実績として、無関係な金額が書かれている。20年3月期は業績連動の対象時期を「当事業年度」と間違えている。

 24年3月期のディスクロージャー(情報開示)誌にも誤りがあった。きらやか銀役員の業績連動型報酬の合計を0円としているが、実際は300万円だった。

 じもとHDの担当者は河北新報の取材に「報酬に関する手続きと処理は適正に行っている。有報への転記に相違があり、訂正の手続きを進めている」と説明した。

 有報は金商法、ディスクロージャー誌は銀行法に基づく開示書類。特に、有報は虚偽記載があった場合、刑事罰や課徴金、損害賠償責任を負う恐れがある。

 有報の訂正は一般的に過去5年分が対象のため、じもとHDは20年3月期分に関し、近く訂正報告書を提出する。24年3月期のディスクロージャー誌も速やかに訂正するとみられる。

 業績連動型報酬は幅広い企業で導入が進む。国は報酬の算出方法を投資家に分かりやすく開示するよう求めているが、じもとHDは事実と異なる情報の掲載を繰り返し、誤解を与える運用が常態化している。

タイトルとURLをコピーしました