相次ぐフィットネスクラブの倒産
フィットネスクラブの倒産が相次いでいる。健康ブームは続いているにもかかわらず、である。
東京商工リサーチによると、2023年度(4月~2月)のフィットネスクラブの倒産件数は28件に達したという。16件を記録し最多であった2022年度を12件も上回り、1998年の統計開始以来、過去最高となってしまっているのだ。
しかし、フィットネス業界の市場規模はコロナ禍の収束とともに徐々に回復していたはず。
実際、フィットネス情報サイト『Fitness Business』は昨年6月、経済産業省発表の「特定サービス産業動態統計月報」から作成した「日本のフィットネスクラブ業界のトレンド2022年版」で、2022年のフィットネス市場規模は4503億円と発表しており、市場規模の大きさを物語っていた。
では、なぜフィットネスクラブの倒産が相次ぐ事態に陥ってしまっているのか。流通ジャーナリストの西川立一氏に解説していただこう。(以下、「」内は西川氏のコメント)
大手企業が中小企業を飲み込む流れに…
東京商工リサーチによると、2023年度のフィットネスクラブの倒産件数28件のうち、販売不振が理由となっているのが20件と圧倒的に多く、構成比でいうと71.4%にものぼっている。また28件すべて、資本金1億円未満(個人企業含む)の事業者とのことだ。
「倒産してしまったフィットネスクラブは小規模事業者が大半というデータですが、不振に陥る原因は、やはり資金力不足でしょう。フィットネスクラブやジム施設は、定期的にマシンや器具を最新のものに買い替えていく必要があります。会員数を維持するために、設備の魅力を常に更新しなければならないのですが、資金不足に陥った小規模事業者は、設備を一新することがなかなかできません。そうして大手企業の運営する一大チェーンと比較して設備の魅力が劣ってしまい、顧客が大手に流れてしまうのです。
さらにフィットネスクラブの競争が激化していけば、集客するためには広告宣伝費が必要ですが、小規模事業者は大手企業と比べてそこに大量の資金を投じるというのも難しい。他にもテナント代や水道・光熱費、人件費などのコストがかさんでいることも、倒産数が増加する一因にあるでしょう」
健康ブームで競合他社が増えすぎており、淘汰されていった結果が昨年度の最多倒産件数につながっているということか。
『RIZAP』でフィットネスビジネスは一変
フィットネスクラブ業界において、忘れてはいけないのが『RIZAP』の台頭。早いものでもう10年以上前となるが、2012年に1号店をオープンした『RIZAP』は2013年頃から流行し、パーソナルジムの火付け役となった。
フィットネス情報サイト『Fitness Business』によると、新規開業した「ジム・スタジオ/単一アイテム施設」は、2014年の56件から2015年には161件と急増。一気に3倍近くにまで増加していたのは、『RIZAP』ブームの影響と見て間違いないだろう。
「2014年以降に新規開業したパーソナルジムは、『RIZAP』の成功を見て参入した事業者が多かったのです。パーソナルジムの流行により、企業やジムに魅力を感じるのではなく、トレーナー自身に魅力を感じ顧客がついている部分もあったため、小規模なパーソナルジムなどの起業でも、一定の顧客数を確保すれば経営を安定軌道に乗せられるんです。
しかしそれから10年ほど経った現在、設備の入れ替えでコストがかさみ、コロナ禍を経て顧客が離れ、経営難に陥っているジムも少なくありません。また、パーソナルジムは『コナミスポーツクラブ』、『ゴールドジム』のような従来の一般的な店舗型ジムと比べて月額料金が高く、昨今の消費者を取り巻く厳しいお財布事情も重なり退会する人が増加しました。こういった複数の要因が重なり、倒産に追い込まれる事業者が増えてしまったのでしょう」
小規模なパーソナルジムだけでなく、パーソナルジムの一大チェーンだった『RIZAP』も経営難にあえいでいたことはご存知のとおり。そんな『RIZAP』グループは、起死回生の一手として2022年7月からコンビニジム『chocoZAP』のサービスを開始した。
記事後半は「大ブームだった『RIZAP』がまさかの赤字に…しかし『驚異的な復活』を遂げていた」から。