あおり警戒、摘発倍増 宮城・福島の高速道路 各県警がヘリで取り締まり強化

宮城、福島両県の高速道路で、前方を走る車両との車間距離を十分確保せずに道交法違反の「車間距離不保持」で摘発されるケースが、前年比で倍近く増えたことが両県警のまとめで分かった。山形県でも増加傾向にある。茨城県の常磐自動車道で起きた運転手による殴打事件など悪質なあおり運転が全国的に注目されており、各県警は警戒の目を光らせている。

 今年1~7月の東北各県にある高速道路での車間距離不保持の摘発数は表の通り。宮城は既に昨年1年間(291件)の9割近くに上り、福島も前年同期比で倍以上増えた。減少した岩手も高水準が続く。
 宮城県警高速隊は「潜在的だった違反を摘発できるよう、狙いを定めたパトロールが奏功している」と分析する。
 東北自動車道が県内を縦貫する岩手、宮城、福島の3県警は、異常接近や急な車線変更といったあおり行為に対し、ヘリコプターを使い取り締まりを強化している。
 常磐道の事件のように、あおり運転は運転手らとのトラブルに発展し、暴行や傷害といった暴力事件になるケースも多い。
 宮城県では昨年6月、あおり運転を注意した男性を大型トラックのドアにしがみつかせたまま、約6キロ走行し振り落とした男が殺人未遂容疑で逮捕、起訴され、懲役3年(執行猶予5年)の有罪判決を受けた。
 トラブルを避けるには、危険な車の挑発に乗らずに道を譲り、相手が車を降り近づいてきても窓やドアを開けず接触しないことが有効とされる。ドライブレコーダーの搭載を示すステッカーを貼るのも効果的だ。
 県警交通企画課は「危険な状況に巻き込まれた場合は安全な場所に移動し、110番してほしい」と呼び掛ける。

◎一般道 違反確認難しく

 あおり運転は命に関わる事態になる恐れがあるものの、道交法や刑法などで摘発されても罰金刑で済む場合が大半だ。警察が行為の一連の流れを確認するのが難しい一般道では摘発も難しく、トラブルに遭った人からは、より厳しい処罰を望む声が上がっている。
 仙台市の会社員男性(41)は5月末、営業用のライトバンで市内の県道を走行中、後続の車に異常接近された。片側3車線の国道に左折した途端、目の前に割り込まれ、猛スピードで追い越された。
 数キロ走り、自宅に向かう狭い道路に入ると、あおってきた車が信号待ちしていた。信号が青になっても車はなかなか発進せず、動きだした後も急減速や不自然な低速運転を繰り返し、走行車線に止まったという。
 「突然のことで頭の中が真っ白になった」と男性は振り返る。抗議しようと車を降りると、近づいてきた運転手の男ともみ合いになり、互いに軽いけがを負った。
 警察に経緯を説明したが、相手は交通違反で立件されず、逆に相手と共に傷害容疑で書類送検される羽目になった。男性は「あおられなければ、トラブルにもならなかったのに」と不満げだ。
 社会的な関心の高まりを受け政府・与党は、あおり運転の厳罰化を検討する方針を示した。男性は「危険なあおり運転は常習性が高いと感じる。厳しい処罰がなければきっとなくならない」と訴える。

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