担い手の減少に悩む京都府北部の宮津・与謝地域の漁業の現場で、漁師を増やすための取り組みが始まっている。漁師の育成は従来、世襲や地域内での 雇用が主だったが、地元出身者以外からも志望者を呼び込む「海の民学舎」が始まった。また、漁師志望の移住者に理解を示し、協力する地域も出てきた。
海の民学舎は4月に開講した。府海洋センター(宮津市小田宿野)内にあり、府や府漁業協同組合、沿岸の府内4市町でつくる協議会が運営。1期生10人は17~41歳で関東出身者もおり、前職は幅広い。漁業の技術や制度、法律を学び始めた。
通常、漁師になるには漁協組合員になって、個人経営漁師になるか水産会社などに雇われる方法がある。組合員になるためには漁協が定める地域に住 み、年91日以上漁業を営んだり従事したりするなどの要件がある。このため漁師は世襲が一般的だが、過疎化も相まって担い手確保に苦労しているのが現状 だ。
学舎の役割は公的な機関が運営を担うことで、漁業地域と志望者の橋渡し役になることだ。1年目は海洋センターで技術や法律、制度を中心に学び、2年目は実際に漁村で漁法を習い、少しずつ経験を積み、漁師の暮らしになじんでいく。
1期生は4月中旬、センター職員の案内で府内9カ所の漁協全支所を訪ねた。大浦支所(舞鶴市野原)では漁師から直接、漁業に取り組む心構えを聞い た。「組合員資格はどうやって取るのか」「事故の頻度は」など質問し、漁師の生活を学んだ。同センターは「理想と現実のギャップを埋め、漁村との関係がう まくいくようサポートしていく」とする。
公的な育成策と別に、個人で地域に入り漁師を目指す人もいる。
伊根町平田の高橋貴誠さん(53)は4年前、神戸市から移住した。買ったナマコやアワビを乾物にして販売する。「自分で採ったナマコを使いたい」と、3月から漁師歴約10年の前野耕太郎さん(37)に雇ってもらった。
高橋さんは「年91日以上」働き、組合員になることが当面の目標だ。漁船に乗り、天気図の見方や潮の流れを体得しようと努力している。前野さん は、移住者が漁師を目指すことで地域が活性化することを期待する。「地元漁師にとっても仲間が増える。互いに刺激しあう関係になればうれしい」