あの「超ミニ鉄道」紀州鉄道と商店街がタイアップ 補助金に頼らず街おこし

日本有数の「超ミニ鉄道」として知られる紀州鉄道を生かして、和歌山県御坊市の商店街などが街の活性化へ取り組んでいる。県の後押しを受けながらも、補助金に頼らないという異例の形態でチャレンジ。同鉄道を利用すれば商店街の商品割引や粗品が贈呈されるなど、地域の人たちが工夫を凝らした“おもてなし”で出迎える。「急増とはいかないが利用者も訪れ、鉄道との連携が強まった」と店主らも手応えを感じている。
“食べ鉄”でGO! 駅ナカに「いっぷく停」
 同市寺内町にある御坊市商店街は木造の日本家屋が並び、寺院や昭和初期に建てられた古民家など観光資源に恵まれている。市中心部を走る総延長わずか2・7キロの紀州鉄道は、ユニークな車両や昭和初期に建てられた駅舎など見どころも多い。しかし利用客の大半は地元の通勤、通学客で、商店街も店主の高齢化などで閉店も増加。客足は往時よりめっきり減った。
 「何とかしなければ」。御坊市商店街振興組合連合会の坂井和夫理事長が危機感を抱いていた矢先、県から「補助金に頼らない事業をしませんか」と提案があった。今年6月、県の担当者が計画案を提示。同連合会と協議を重ねた結果、第1弾として紀州鉄道の乗客を対象としたサービスを実施することに決めた。
 10月から紀州鉄道の乗車証明書とクーポン券、商店街の地図が一体となったチラシを作成し、車内や駅に設置。乗客はチラシに掲載されている和菓子店や総菜店など22店舗で割引などが受けられる。同鉄道も紀伊御坊駅に簡易休憩所「駅なかいっぷく停」を設置。商店街で買い求めた総菜などをゆっくり食べることができ、利用者が商店街を散策しやすいよう後押しする。
 今後は3カ月ごとにサービス内容や参加店を見直すほか、近隣の県立日高高校と協力し、生徒に新たな地図を作ってもらうという。来年4月には障害者就労訓練を兼ねた古民家レストランの開店も控え、利用者拡大に期待がかかる。
 300円で抹茶と菓子を提供しながら、寺内町の歴史を説明している大谷呉服店の店主、大谷春雄さんは「この取り組みで、商店街と紀州鉄道との距離が近づいた。これから積極的に協力していきたい」と笑顔。県商工振興課商工支援班の三栖太朗副主査は「補助金に頼る支援はお金を使い切るとそこで終わってしまう。商店街が自分たちの力で長期的に取り組める仕組みを作りたい」と話し、「御坊の取り組みを見て、県の商店街全体が活気づけば」と期待を寄せた。

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