日本に対し「歴史の歪曲」を叫ぶ韓国メディア。そんな彼ら自らが、資料もきちんと読み込まず、「我田引水」としかいいようがない歪曲をしでかし、日米の研究者らがたいへん困惑している。
5月5日、日本学や歴史学など、米国を中心に世界でも著名な研究者187人が「日本の歴史家を支持する声明」(原題:Open Letter in Support of Historians in Japan、米国のアジア研究者の交流サイト「H-ASIA」で読むことが可能)を発表した。これには、米マサチューセッツ工科大学のジョン・ダワー教授 やハーバード大学のエズラ・ボーゲル教授、入江昭名誉教授など、日本でも著名な研究者らが署名したものだ。
この声明は、「日本の多くの勇気ある歴史家が、アジアでの第二次世界大戦に対する正確で公正な歴史を求めていることに対し、心からの賛意を表明するもの」 であり、「日本と東アジアの歴史をいかに研究し、いかに記憶していくべきなのかについて」研究者らが共有する関心が発せられたもの、としている。声明は、 英文と日本文の両方で発表され、発表前には在米日本大使館を通じて日本の首相官邸にも送られている。
この内容は、日本に向けられてはいるものの、東アジアの歴史に対し、安倍晋三首相はじめ日本政府を狙って批判・糾弾しているものではないことは全文を読めばわかる。
「正しい歴史への簡単な道はない」「日本の研究者・同僚と同じように、私たち(声明を発表した研究者)も過去のすべての痕跡を慎重に天秤に掛けて、歴史的 文脈の中でそれに評価を下すことのみが、公正な歴史を生むと信じています」と呼びかけている。そして、「私たちは歴史研究の自由を守ります。そして、すべ ての国の政府がそれを尊重するよう呼びかけます」としている。
さらに、「今年は、日本政府が言葉と行動において、過去の植民地支配と戦時における侵略の問題に立ち向かい、その指導力を見せる絶好の機会です」と位置づ け、「4月のアメリカ議会演説において、安倍首相は、人権という普遍的な価値、人間の安全保障の重要性、そして他国に与えた苦しみを直視する必要性につい て話しました。私たちはこうした気持ちを賞賛し、その一つ一つに基づいて大胆に行動することを首相に期待してやみません」としており、安倍首相の演説内容 を批判しているわけではない。
ところが、聯合ニュースの報道の中身は、日本たたきで終始する、いつもの韓国メディアの論調から外れていない。英文も日本文もどちらも十分に理解できない(と思われる)特派員が、都合のよい論調で、しかも原文の意味を歪曲して伝えているとしか言えないような内容だ。
まず、「学者187人が安倍首相に対し旧日本軍慰安婦問題とこれに関連した歴史的な事実をねじ曲げることなく、そのまま認めるよう求める声明を共同で発表した」としているが、そんな内容はどこにも書かれていない。
また、声明では「最も先鋭的な歴史問題の一つに慰安婦問題を挙げ」とし、「慰安婦にされた女性らの苦しみを被害国で民族主義的な目的に悪用することは国際的な問題解決を難しくし、被害女性の尊厳を冒涜することだ」と声明に記されていると記述している。
だが、実際には、「元慰安婦の被害者としての苦しみがその国の民族主義的な目的のために利用されるとすれば、それは問題の国際的な解決をより難しくするの みならず、被害者自身の尊厳をさらに侮辱することにもなる」と書かれている。民族主義的な目的というのは、まさに韓国がしていることを指している。これは 英文を読んでもわかる。
しかも、慰安婦制度の問題についてこの声明のなかでは、「この問題は、日本だけでなく、韓国と中国の民族主義的な暴言によっても、あまりにゆがめられてきました」と明記されている。この部分を、聯合ニュースは都合よく外して報道しているのは間違いない。
聯合ニュースの歪曲はさらに続く。報道では「大勢の女性たちが自らの意志に反してとらえられ、むごい野蛮行為のいけにえにされた証拠は明らかだ」としてい る。だが、声明では「大勢の女性が自己の意志に反して拘束され、恐ろしい暴力にさらされたことは、すでに資料と証言が明らかにしている通りです」とのみ記 されており、どこにも「むごい野蛮行為」「いけにえ」といった言葉はない。
この声明は、タイトルに「日本の歴史家を支持する声明」とされているが、必ずしも日本だけに向けられたものではない。
東アジアの歴史を考えるうえで、混乱をまねている問題を取り上げ、当事者・当事国が冷静な姿勢で、互いに敬意を払いながら誠実に話し合っているという事実 にも触れ、「過去の過ちについて可能な限り全体的で、でき得る限り偏見なき清算を、この時代の成果として共に残そうではないか」と結んでいるなど、非常に 傾聴すべき点が多い声明だ。
この声明作成を手伝い、英文で 作られた声明を日本語に翻訳する作業を行った早稲田大学政治経済学術院の浅野豊美教授は「この声明は、英文も日本文もともに正文であり、署名したすべての 研究者に回付され検討されたもの。東アジアの歴史について、さまざまな多様性を許容しながら真摯に研究していこうという呼びかけであり、米国人研究者の常 識に絞って作成された」と説明する。
実際には、米ジョージタウン大学で日本史を教えるジョルダン・サンド教授が中心となってとりまとめ、英文・日本文で内容を熟考し、文面も日英で整合性がとれるように正確で慎重な作業が繰り返されたという。
実際に読めば、韓国メディアがよく使う「残虐Atrocity」「性奴隷Sex slaves」といった言葉はどこにも使われていない。また、「サンド教授はメディアの報道でゆがめられることは覚悟していた様子で、礼儀を失わないため にも、発表前に首相官邸にお送りした」(浅野教授)という。
聯合ニュースの歪曲報道は、最後にも大々的に行われている。「声明発表を主導した米コネティカット大のアレクシス・ダデン教授が聯合ニュースとのインタ ビューに答えた」とし、「安倍政権がかつての河野談話の時のように過去の過ちに対する責任を認め、歴史歪曲や政争に用いることをやめるよう訴えかけるも の」と趣旨を説明したと報じている。
ところが、「ダデン教 授は署名者の一人であるが、内容を主導してはいない」(浅野教授)。聯合ニュースが報道したダデン教授のコメントはあくまでも個人的見解であって、「この ようなコメントは今回の声明に盛られた研究者の総意とはまったく違う。声明は韓国の民族主義的言辞をも戒めながら、安倍首相の良心に誠実に訴え、平和や人 権・民主主義という価値を追求してきた日本がこの問題の解決を主導すべきであり、また今年は絶好の機会と訴えている。このことは原文を読めばわかるはず だ」と浅野教授は指摘する。
韓国メディアは長期間にわたって日本や米国に特派員を置いている。歴代の特派員は、一部を除き決して短くない特派員生活を経験しているはずだ。
だが、韓国内の「反日有理」という雰囲気に押されてか、冷静な発信という記者の基本がまったくできていないようだ。また、日本語であれ英語であれ、外国語 を上手に話す特派員も多いものの、日本に対してはその実力がとたんに発揮できないように身についているようだ。特に聯合ニュースは、韓国内のメディアを通 じてそのまま報道されるケースが多い。このようなメディアが影響力を持ち、韓国国民の対日世論に多大な悪影響を与えていることを日本でも理解したほうがい いだろう。