東京都内では激レア!長さ約9kmの直線道路
日本最大の都市となる東京都は、他の都心部と比べてもくねくねと曲がった道や複数の交差点が入り混じった多差路地帯が数多く存在します。
ところが都内では珍しく数キロにわたる「謎の直線道路」もあるようです。いったいどのような秘密があるのでしょうか。
都内の複雑な道路の造りが多いのは所説ありますが、徳川家康が外敵から江戸城への進入を困難にさせるために入り組んだ造りにしたことや、昭和初期の高度成長期に道路の乱開発が進められたことが理由といわれています。
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東京都は地名に「坂」が着くことが多いことからもわかるように、地形の起伏が激しく道路の整備には制約が多かったことがあげられます。
そうした中で「428号高円寺砧浄水場線」では約9kmにも及ぶ直線が続いており、都内では珍しい道路といえるでしょう。
高円寺砧浄水場線は、杉並区高円寺から世田谷区喜多見に向かう直線道路で荒玉水道道路とも呼ばれています。
道路の幅は区間にもよりますが、1.7mから2.0mの車幅制限がある生活道路で通行幅が確認できるようにポールコーンの設置が至る所にあります。
道路には重量制限もあって、総重量4トン以上のクルマは通行できないなどかなりの制限があり、大型車での通行は困難です。
それだけでなく、一方通行が随所にあって方向も統一されていないためクルマで走破するのは不可能といえます。
荒玉水道道路では路線バスも運行されていますが、重量制限のある区間は小型のバスが運行されています。
都内でも随一といえるほどの直線道路には、なぜこのような制限があるのでしょうか。
道路なのに「水道」? 謎の「水道道路」とは?
実は高円寺砧浄水場線は元々クルマのために造られた道ではなく、道路の下には直径1.1mほどの水道管が埋設されていて、砧浄水場まで直線でつながっている水道道路でした。
水道道路とは、主に上水道を輸送する水道管を埋設した土地の上に設けられた道路のことを指します。
1934年の竣工当初は歩行者用道路でしたが、1962年に補強をすることによりクルマも通行できるようになりました。
しかし、元々は水道管敷設のために用意されたスペースのため、水道管保護のため通行できるクルマの制限を設けています。
都内でここまでの長距離である荒玉水道道路が造られた理由は、大正時代までさかのぼります。
当時の都心部近郊の急激な人口増加への対応や安全な水の供給のために、荒川と多摩川で摂取した水を都内に送る上水道施設の建設に取り掛かりました。
この荒川の「荒」、多摩川の「多摩 (玉) 」の頭文字をとって荒玉水道と名付けられました。
しかし、当初の計画は途中で変更されて、多摩川のある砧浄水所から板橋区大谷口給水所までとなり、荒川は関わることがなくなります。
また、荒玉水道には野方配水塔と大谷口配水塔がありますが、現在はどちらも配水塔としての役目を終えています。
野方配水塔は災害用の給水槽として利用されており、大谷口配水塔は取り壊されて代わりにデザインを模したポンプ棟に作り替えられました。
芸術性の高い外装は、長くにわたって地域のシンボルとして親しまれていたこともあって、違った形で継承させる方向になったようです。
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東京都内でも珍しい、果てしなく続く直線道路と欧州の古城のような配水塔など、見どころ満載なのが荒玉水道です。
サイクリングやウォーキングで利用されている人も多いようなので、近隣にお住いの人は立ち寄ってみるのもいいでしょう。