お好み焼き 朝ドラ見たら食べたくなって…てっぱん効果

 大阪のお好み焼き店を舞台に広島県尾道市出身の主人公が奮闘するNHK朝の連続テレビ小説「てっぱん」の放送開始から、お好み焼き店の客足が伸びている。番組ではこんがり焼き上がったお好み焼きが頻繁に登場するため、視聴者は思わず食べたくなるようだ。自宅で焼く人も増えており、家庭用食材の売り上げも好調。朝ドラ効果に、お好み焼き業界が熱い。
 大阪・千日前のお好み焼き全国チェーン「千房(ちぼう)」千日前本店(大阪市中央区)。昼食や夕食時は、次々と通る注文に店員は大忙しだ。友人と来店した大阪市都島区のパート従業員、福山真澄さん(32)は「今朝、ドラマを見ていておいしそうやなあと思い、久しぶりに食べたくなった」と足を運んだという。
 この店は、番組の放送が始まった9月末以降、売り上げが急増。10月は前年同月比で4割増だった。宮内(くない)伸一店長(31)は「50~60歳代の客が増えた。店でも『てっぱん』がよく話題に上っている」と話す。今月から主人公の出身地にちなみ、砂ズリとイカ天を入れた尾道市名物の「尾道焼」をメニューに加えた。
 地元の常連客が中心だった「下町の老舗店」も客層に変化が表れている。大阪市福島区のお好み焼き店「かく庄」の店長、穴田佳勝さん(47)は「最近、一見(いちげん)さんがよく来るようになった。ホテルを通じて、出張中のビジネスマンからも予約が入る」と喜ぶ。
 お好み焼きやたこ焼きなど「粉モン」の普及にあたる「日本コナモン協会」(大阪市浪速区)には、お好み焼き店から「番組のポスターを張りたい」という依頼が殺到。事務局長の林晃正さん(50)は「放送開始後、客の入りが好調という話をよく耳にする。全国放送される朝ドラ効果で、お好み焼き文化が各地に広がればうれしい」と話す。
 家庭にもお好み焼き人気がじわりと広がる。大手製粉メーカー「日清フーズ」(東京都千代田区)によると10月以降はお好み焼き粉の売り上げが前年同月比で1割近く増えた。担当者は「家族一緒に楽しめる点が受け、お好み焼き市場は拡大している。関西だけでなく関東でも売り上げが伸びている」と話す。
 「てっぱん」の視聴率は、今月11日までの平均(ビデオリサーチ調べ)が、朝の放送時で関西地区15.5%(関東地区16.9%)とまずまず。制作にあたるNHK大阪放送局の三鬼(みき)一希プロデューサーは「お好み焼きはみんなで作って食べる料理。『みんなで一緒にご飯を食べよう』というドラマのメッセージが浸透しているならうれしい」と話している。【遠藤孝康、酒井祥宏、津久井達】

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