お年玉は西高東低? 地域差を調べてみた

お正月、子どもたちが楽しみにする「お年玉」。地域によって渡す金額に差はあるのでしょうか。国の統計から推計すると、1世帯当たりの額は西日本で高く、東日本で低い傾向が見えました。(編集局コンテンツセンター・佐藤理史)

2000年以降、他のこづかい、贈与金とも減少傾向が続いている

[調べた方法]
 約9000世帯を対象とする総務省の家計調査(家計収支編)を参照した。対象は2人以上の世帯で、単身世帯は含まない。県庁所在市の値を都道府県の値と見なす。

 着目した項目は毎年1月の「他のこづかい」と「贈与金」。「他のこづかい」は世帯主を除く世帯員への小遣い、「贈与金」は社会慣行に基づく現金支出を指す。定期的な小遣いの1月分、祝儀、香典なども含んでいる可能性はあるが、それらを区別できないため、両項目の合計をお年玉の総額と見なす。1世帯が支出した金額であり、1人の子どもがもらう金額ではないことに注意してほしい。

2000年 3万4611円
2005年 2万9833円
2010年 2万5286円
2015年 2万2638円
2020年 1万8876円
2021年 1万3890円
2022年 1万6694円

 お年玉への支出は最新の22年で約1万6700円。20年前と比べると、半額程度まで落ち込んでいる。

 そもそも15歳以下の子どもの数が減っている。2000年の1858万人(総人口比14・7%)から、2020年は1512万人(12・0%)へ、20年間で346万人、約2割減少。同様に、1世帯当たりの人数も2・67人から2・21人に減った。

 子どもの減少を考慮しても、減り幅は大きい。帰省や親族の会合が減っている可能性がある。2021年は00年以降で過去最少の1万3890円。新型コロナウイルス感染拡大の影響と考えられる。

■過去15年間(2008~2022年)の平均ランキング
(※高額・少額上位3県と東北6県を抜粋)
( 1)富山 3万2994円
( 2)三重 3万 897円
( 3)徳島 2万8341円
    全国 2万2326円
(17)福島 2万2631円
(39)山形 1万9013円
(42)宮城 1万7696円
(44)岩手 1万6932円
(45)新潟 1万6306円
(46)秋田 1万6251円
(47)青森 1万4917円

 15年間の平均を計算し、年によるばらつきをならした。3万円以上を支出しているのは富山、三重。相対的に少ない青森、秋田、岩手は1万5000円前後で、上位県の半額程度だった。

 地方別に見ると、上位は富山、福井といった北陸、徳島や香川といった四国が目立つ。九州や関東は中位。近畿は三重が2位だが、大阪は43位と幅がある。東北や中国は下位に固まっている。

直近5年間の「他のこづかい」「贈与金」の合計平均金額に応じて色分けした。濃色が高く、淡色が低い

あなたの地域の金額を地図で確認する

■地方ごとの平均ランキング
(1)四国 2万5114円
(2)中部 2万3422円
(3)近畿 2万2797円
(4)九州 2万2632円
(5)関東 2万1669円
(6)中国 1万9865円
(7)北海道1万9282円
(8)東北 1万7907円

■直近5年(18~22年)と前の5年(13~17年)の平均比較
( 1)福岡   2308円増
( 2)青森     56円増
( 3)兵庫     52円増
(11)秋田   2691円減
(13)岩手   3179円減
(25)福島   6656円減
(27)宮城   6748円減
(28)山形   7048円減
(45)富山 1万8441円減
(46)徳島 2万 409円減
(47)三重 2万1715円減

 この10年を前後半に分けて、平均額の差を調べると、全国で約3割減。一定程度増えているのは福岡だけだった。青森、兵庫、滋賀はおおむね横ばい。その他は1000円以上減少している。

 15年平均で上位を占める三重、徳島、富山の3県は減少幅が大きく、以前の半額程度に落ち込んでいる。元が高額だった分、四国の落ち込み幅は約4割と大きい。北東北は南東北より落ち込み幅が小さい傾向が見てとれる。宮城は直近3年平均で約1万円と全国最少の水準となっている。

■最新2022年ランキング
( 1)富山 2万3597円
( 2)三重 2万3318円
( 3)奈良 2万2125円
    全国 1万6694円
(16)福島 1万5754円
(19)岩手 1万5578円
(38)宮城 1万1342円
(39)青森 1万1082円
(44)秋田   9288円
(45)熊本   8988円
(46)埼玉   7902円
(47)山形   6904円

 地域差の理由を特定するのは難しい。社会学では贈与(贈答文化)は人間関係の濃密さを示すとされる。人間関係の濃淡がお年玉の「相場」を形成する一つの要素とも考えられる。ただ、所得水準や子どもの比率、冬の気候の厳しさなど、他にもさまざまな地域事情が絡むとみられる。近年は新型コロナの感染状況も影響を与えていそうだ。

[お年玉の起源]
 駒沢女子大の下川雅弘教授(歴史学)によると、お年玉は年神様からの贈り物の意。年神に供えた餅を目上の者が目下の者に配ったのが始まりとされる。

 江戸時代前期には、年頭のあいさつに添えた贈り物全般を指すようになる。近代以降、お世話になった人に贈る刀や銭などは「お年賀」と呼ぶのが一般的になった。一方、お年玉という言葉は目下の者へのお小遣いの意味合いが強くなった。いずれも当時は大人同士のやりとりが主流だった。

 お年玉の変遷は本格的にはほとんど研究されていない。現在のように、お年玉が正月に大人から子どもへ与える金銭として全国各地で定着したのは戦後とみられる。駄菓子屋の普及などで、子どもが金銭を使用する機会が増えたのが背景となった可能性があるという。

タイトルとURLをコピーしました