「お金が貯まらない人」は、習慣、人づきあい、仕事の進め方などすべてにおいて、捨てることができないばかりに、どんなに努力をしてもお金の不安から解放されずにいる。しかし、「捨てれば、お金は貯まる」。だから、いらないものを捨ててしまえばいい。
『お金が貯まる人が捨てた37のこと』(田口智隆著、フォレスト出版)の著者が言いたいことをまとめると、上記のようになります。そして、なぜそこまで断言できるかといえば、著者自身が「捨てる」ことによってお金の苦しみから解放された経験を持っているから。28歳のとき500万円の借金を抱え、自己破産寸前の状態に陥っていたものの、「お金が貯まらない習慣」を一気に取りのぞく(捨てる)ことによって苦難を乗り越えたというのです。
しかし、「捨てる」のはなかなか難しいもの。捨てるために、どのような心構えが必要なのでしょうか? 第1章「お金の管理術」から、いくつかを引き出してみます。
1.「口座は1つだけ」を捨てる
銀行の口座は大別すると「普通預金」と「定期預金」の2つに分けられますが、いまはその両方をひとつの口座で管理できる「総合口座」という便利な口座があります。ところが、便利なはずの総合口座にしたために、お金が貯まらなくなっている人がいるのだとか。
なぜなら総合口座の場合、普通預金の残高が不足しているときでも、定期預金を担保にして自動融資が受けられるから。定期は引き出せないけれども融資が受けられるというのであれば、定期分を引き出していることと変わりがありません。
そこで著者がおすすめしているのは、口座を分けること。生活費を引き出すための口座と、将来のために取っておくお金を別々の口座にしておくだけで、定期預金に入れたお金には手が出しづらくなるというわけです。(36ページより)
2.「ATMでちょこちょこ引き出す」習慣を捨てる
お金を貯めるために大事なのは、「使うお金の金額」をきちんと把握すること。しかし振り込まれた給与を銀行のATMからちょこちょこ引き出していると、総額でいったいいくら引き出したのかわからなくなってしまうものです。それでは行き当たりばったりすぎて、お金の使いすぎかどうかをチェックすることなど不可能。
月に使うお金をコントロールするには、ATMからちょこちょこ引き出すのを辞め、一喝で引き出すべきだといいます。そうすれば何度もATMに並ぶ必要もなくなり、給料日までに使えるかも目視で確認できるようになる。「お金を簡単に引き出せる」便利さが予算オーバーを引き起こす元凶なのだから、それを取り除けばお金は貯まるようになるということです。(40ページより)
3.「切りつめる」貯め方を捨てる
お金を貯めることに夢中になりすぎ、度を超した節約をする人がいると著者は指摘しています。いわゆる「ドケチ」なタイプ。そういう人は必要なものまで切り詰めて、何かに取りつかれたようにお金を貯めようとするもの。
ここで意識すべきは、お金には「投資」「消費」「浪費」と3つの使い方があるということ。「投資」は、自分の将来に役立つお金の使い方。「消費」は、いまの生活に必要な出費。「浪費」は、いわゆるムダ遣いです。
しかし、ドケチな人は「投資」「消費」「浪費」のバランスが「3:7:0」になっているといいます。つまり、「『浪費』は一切しません」というのが、こういう人のお金の使い方。もちろんムダなことにお金を使う必要はありませんが、だからといって「浪費を0」にすべきだと言っているわけではないと著者は強調しています。なぜならドケチになりすぎると、人間としての魅力が欠如してしまうから。
「投資」「消費」「浪費」のちょうどいいバランスは「2:7:1」くらい。お金はバランスよく使うことが大切で、ずっと貯めつづけていると、お金の適切な使い方がわからなくなってしまう。そしてそういう人こそ、ふとしたきっかけでバカなことに大金を使ってしまったりするものだという考え方です。使いすぎると不幸を招くが、反対にがめつく貯めるばかりでも不幸を招くということです。(48ページより)
4.安いだけのバーゲンを捨てる
「バーゲンで買わないと損した気分になるから」「とにかく安いから」という理由だけで欲しくもない商品を買うと、あとで必ず後悔するもの。つまり「安いから買う」というのは、「それほど気に入っているわけではない」のに買うということ。だから、「安いから買う」という発想の人は、お金を貯めることができない。当然の発想ではないでしょうか?
本当に欲しいものを手に入れたときには、幸せな気持ちを持続させることができます。しかし安いもの、お得なものは本当に欲しかったものではないので、手に入れた幸福感も薄くなる。結果、使いもしないものであふれてしまうことになるわけです。
大切なのは、ものを値段で推し量るのをやめること。本当に必要なものは、値段が高かろうと安かろうと、その人を幸福感で満たしてくれるもの。逆に「ブランドだから」という理由だけで無駄なものを買っているとしたら、その人は幸せではないということにもなります。
そこで、自分がそういう人になっていないか不安なら、部屋にあるものを一度チェックしてみればいいと著者は提案しています。使わないものが転がっていたら処分して、本当に必要なもの、気に入っているものだけを残す。そうすれば部屋もスッキリして快適になり、自分にとって本当に必要なものはなにかという基準がはっきりしてくるという考え方です。(58ページより)
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少し前に「断捨離」ということばが流行りましたが、「捨てる」という発想はたしかに重要。他にもさまざまなアイデアが紹介されていますので、目を通してみれば役に立つのではないかと思います。
(印南敦史)