かっぱ寿司だけじゃない…活況の回転ずし業界が「不祥事ネタ」を連発している背景に何があるのか

回転ずし業界では最近、不祥事のネタが豊富だ。業界4位「かっぱ寿司」の社長が、同業他社の営業秘密を不正に持ち出した疑いで逮捕され、辞任。1位「スシロー」も、メバチマグロの代わりに、仕入れ値が安いキハダマグロを提供していたことを明かして謝罪。コロナ禍で打撃を受けた外食産業の中で、好調を維持してきた回転ずしだが、売り上げが増えればそれでいいの?(特別報道部・山田祐一郎)

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◆スシローも、くら寿司も

 かっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイトは3日、3位「はま寿司」の仕入れ値などのデータを不正に取得したとして不正競争防止法違反の疑いで先月末に逮捕された社長(当時)の田辺公己容疑者(46)の辞任を発表した。

 新社長になった山角豪氏(44)は記者会見で黒いスーツに身を包み「多大なご迷惑をおかけし、おわび申し上げる」と頭を下げた。

 スシローの親会社も1日、「まぐろ」や「漬けまぐろ」のメニューで、通常使うメバチの在庫切れや単純な誤りのため、9月下旬に6店でキハダを代用していたと明らかにした。キハダは10月からキャンペーンで提供する予定だった。

 なお、スシローは6月、ウニやカニの在庫がない店があるのに宣伝を続ける「おとり広告」をしたとして、消費者庁から景品表示法違反で再発防止を命じられた。7月には、生ビール半額キャンペーンの広告を一部の店で開始前に掲示していたとして謝罪している。

 2019年には2位「くら寿司」で、アルバイトの少年がごみ箱に捨てた魚をまな板に戻す動画を公開し、偽計業務妨害の疑いで書類送検されている。

◆急拡大する市場でかっぱ寿司は一人負け

 醜聞の一方で、回転ずしのマーケットは近年、急拡大を遂げている。

 帝国データバンクが5月に公表した調査によると、回転ずしの市場規模は11年度の4600億円から、21年度は7400億円と1.6倍になった。1世帯当たりの消費額を外食全体でみると、21年度は15年度の7割に低迷しているが、回転ずしは逆に約1.2倍になっている。店舗数も拡大傾向にある。

 ただ、かっぱ寿司の場合、上位3社とやや趣を異にする。「1皿100円」の先駆者で、かつては業界トップだったが、11年にその座をスシローに譲った。

 不振のため社長も頻繁に交代。田辺容疑者ははま寿司の親会社出身だった。

 「3社から大きく離された4位で『一人負け』のかっぱ寿司には焦りがあったのでは」。回転寿司評論家の米川伸生氏が事件の背景をこう説明する。

◆不祥事続発の背景に何が?

 田辺容疑者がはま寿司から持ち出したのは、日々の売り上げや仕入れ値のデータとみられる。

 米川氏は「他社の具体的な売り上げデータは、自社の店舗展開のために重要だ。仕入れ値の情報もキャンペーン展開などで大きな意味を持つ」と指摘。不祥事続出の要因に「各社とも問題があっても経営陣に伝わらず、現場での誤った判断につながっている」と風通しの悪さを挙げる。

 現在、世界的な物価高や急激な円安で、仕入れ値が高騰。スシローやくら寿司が1皿100円に別れを告げ、値上げの動きが広がる。不誠実で不透明な運営では、やがて顧客が離れかねない。

 経済評論家の鈴木貴博氏は「これまで激しい競争を全力で突っ走ってきた中で業界として脇の甘さがあったのではないか」と倫理観の緩みに言及する。

 事件に関連し、日本企業での営業秘密に関する社員教育の少なさや意識の低さも問題視する。「成長市場だとなおさら、転職の動きが活発になる。外資系企業では、退職者が営業秘密を持ち出さないように契約で明記されている」とし、各社が組織のあり方を見直すように望んだ。

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