この冬に故障したら…寒すぎる給湯器事情

風呂や台所など生活に欠かせない給湯器だが、特にこの冬は故障したら大変なことになりそうだ。部品の生産拠点が集まるベトナムで新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウン(都市封鎖)が行われた影響もあって供給回復の目途が立たず、年内の納品が難しいケースもあるという。設置工事を手掛ける業者も対応に追われている。

 「現在の在庫は、平時の半分以下だ。通常、給湯器の発注をかけると1~2日ほどで届くが、現在は1カ月経っても納品のめどが立たず、メーカーによっては納品は来年2月以降という連絡もある」

 神奈川県内で住宅設備工事を手掛け給湯器の交換工事などを行う「ライフエイド」の小笠原弘宜代表は給湯器不足の現状をこう話す。

 給湯器の在庫が足りずすぐに交換できない場合、同社では給湯機能のみを備えた仮設の給湯器を無償で貸し出しているという。「追い炊きや自動湯張りはできない商品で急場をしのいでもらっているが、それでも在庫に限りがある。交換用の給湯器が届けば返却された仮設給湯器を回せるが、循環が悪くなっている」と小笠原氏。

 給湯器メーカーのリンナイとノーリツは、部品の供給元で生産に遅れが生じているとして、それぞれ複数の給湯器について納入に遅延が生じていると発表している。

 大手メーカーの担当者は給湯器不足の背景をこう明かす。

 「遅延の理由の一つは、部品の生産拠点が多いベトナムでロックダウンが行われたことだが、10月に解除されたことで正常化の兆しもみえている。だが、ワイヤーハーネス(組み電線)など部品の材料も不足しており、こちらは現在も回復の目途が立っていない。ほかにも物流の逼迫(ひっぱく)などが複雑に絡み合い、出荷量は今年の8月から11月にかけてさらにスローダウンしたことで給湯器不足が表面化したようだ」

 今後は値上げの可能性も否定できないという。「材料価格が高騰している以上、納品の遅延が正常化しても価格改定を検討せざるを得ない。給湯器は値上げに踏み切った前例がほとんどなく、実際に値上げすれば異例の事態だ」と担当者。

 前出の小笠原氏によると、水温が下がる冬場は、夏と同じ温度の湯を流すにもエネルギーがかかるため故障しやすく、給湯器の交換作業の繁忙期にあたるという。

 冬場にお湯が出なくなると生活への影響も重大だ。小笠原氏は「一般に設置から10年以内の給湯器は修理部品が残っているが、12、13年後に壊れてから相談を受けると機器の交換で対応せざるを得ないことが多い。10年以内に給湯器を点検することも検討してほしい」と呼びかけた。

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