こんにゃく販売価格の急落で離農が相次いでいるとして、JA群馬中央会と県農協農政対策本部は19日、農家への損失補塡(ほてん)など緊急支援策を山本一太知事に要請した。農協によると、こんにゃくの原料となる生いも(コンニャクイモ)は30キロ当たりの生産費が4300円程度かかるのに対し、2022年産までの過去10年の販売価格の平均がほぼ同じ4328円で、さらに23年産は3003円に落ち込んだ。「生産するほど赤字」の窮状という。【田所柳子】 17年前に就農した渋川市上白井の八高啓輔さん(39)は12ヘクタールでコンニャクイモのみを生産する農家で、大きな打撃を受けた。「借金して機械を導入し、コスト削減と生産性を上げる努力をしてきたが、昨年の販売価格下落でそれが一気に吹き飛んだ」。価格を上げたくても、こんにゃくの生産業者からは「在庫がある」と言われてしまう。今年も安くなる見通しといい、「振り返れば昨年がこんにゃくの大きな転換点になるかもしれない。農家がさらに離農すれば中山間地の農地自体が減り、食の安全保障上も重大だ」と懸念する。 県内では利根沼田、渋川などを中心にコンニャクイモを生産する。生産面積はかつての約5000ヘクタールから約3000ヘクタールに減り、農家数も08年の1800戸超から22年の800戸弱に半減した。販売価格は人口減少や食生活の変化による消費の落ち込みで長期的に下落してきたが、長期保存が可能なこんにゃく粉が過剰在庫化し、昨年は値崩れした。生鮮食品でないため、コロナ禍の影響が一足遅れて出たとも言われている。輸出は拡大しているが限定的で、人件費や肥料、農薬、畑作業に使うビニールなどの高騰も打撃となっている。 群馬はコンニャクイモの生産が9割以上なのに、消費量は全国平均以下という。JA群馬中央会の担当者は「従来も高齢の3ヘクタール以下の小規模農家が離農するケースはあった。しかし去年くらいから10ヘクタール以上の大規模農家でかつ50代くらいの中堅農家が生産をやめるケースが目に見えて増えた」と懸念を示す。 同中央会などは今回、損失補塡や生産資材の助成などの緊急対策に加え、県内の需要喚起、新たな使い道の開発を求めた。種苗会社から種子が購入できる他の野菜と違い、コンニャクイモは農家が種いもも採取するため、いったん生産を中止すると再開が難しいことから、他の野菜などとの複合経営化の支援も要請。知事は支援する姿勢を示した。 中央会の林康夫会長は「販売価格の長期的な低迷や生産資材価格の高止まりで厳しい状況にある。離農による耕作放棄地の増加も懸念され、安定的に中山間地域の農業が存続できるよう支援をお願いしたい」と求めた。