ご当地サーモン、競争激化 「みやぎ」海外に販路拡大 「信州」G7夕食会で脚光

ロシアのウクライナ侵攻の影響で北欧産サーモンなどが値上がりする中、代替品として日本各地の「ご当地サーモン」の需要が高まっている。宮城県産の「みやぎサーモン」は最高級ブランドとして名高いが、産地間競争は激しさを増す。長野県の「信州サーモン」は新型コロナウイルス禍による生産量の減少に見舞われながらも存在感を高めている。

ウクライナ侵攻で北欧産値上がり

 「大型連休は連日注文があった」。信州サーモンを扱う長野県安曇野市の飲食店「小柴屋」を営む柴野和哉さん(48)は、かつてない手応えを感じている。

 4月に同県軽井沢町であった先進7カ国(G7)外相会合の夕食会で信州サーモンが提供された。以降、20年近く店で出している丼や刺し身といったメニューの注文が増えたという。

 信州サーモンはニジマスとブラウントラウトの交配品種で、2004年に水産庁に養殖魚として承認された。21年の生産量は338トン。県内を訪れる観光客らを狙い、県は27年に450トンの目標を掲げる。

 コロナ禍で減った生産量は回復途上で、飲食店関係者は「今は入手しづらい」と口をそろえる。面積が限られる内陸のいけすで養殖しており、大幅な増産は難しいのが実情だ。

 東京の飲食店に信州サーモンの売り込みを図ってきた加藤鯉店(長野市)の加藤修次社長(61)は「新規需要もあるが、対応しきれずもどかしい」と明かす。

産地数は2015年の2倍以上

 水産研究・教育機構(横浜市)によると、生食用のサケ・マス類がサーモンと呼ばれ、国内113カ所で年間約2万トンが生産されている。産地数は2015年に比べ2倍以上に増えた。魚種別ではギンザケが大半を占め、ニジマスやサクラマスなども含まれる。

 養殖ギンザケの発祥地・宮城県は1970年代からの長い歴史を持つ。年間生産量は約1万7000トンで国内の約9割を占める。生け締めした高鮮度の魚を「みやぎサーモン」として17年に統一ブランド化し、米国や東南アジアにも販路を広げる。

 宮城の養殖ギンザケは発祥地の南三陸町が象徴するように、リアス式で穏やかな三陸沖の海面を漁場とする。漁業が盛んな産地周辺に水産加工施設が集積し、安定した生産や販売態勢の構築につながっているのが強みだ。

生産効率の向上が鍵

 他の地域でもブランド確立に向けて戦略を模索する動きはあるが、自治体の補助金頼みとなり、思うように供給量を増やせず採算が不透明な例も一部にある。数年後には国内で海外企業が大規模な養殖事業を始めるとの観測もあり、供給増による価格下落などが予想される。

 機構の今井智主任研究員(42)は「生産効率の向上が生き残りの鍵となる。近隣の産地が統一ブランドとしてまとまるのも一つの手で、自治体による調整も必要だろう」と話す。
(信濃毎日新聞 鈴木悠太=河北新報社から出向)

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