さらばデカ盛りの聖地 39年の歴史に幕

 ボリューム満点の定食で学生らの胃袋を満たしてきた仙台市太白区若葉町の定食屋「佐々久」が31日、店主の高齢化などのため、39年の営業に幕を下ろす。豪快に積み重なった鶏肉の天ぷら、こぶし大の空揚げで親しまれてきた。思い出の味をかみしめようと、別れを惜しむ市内外のファンでにぎわっている。
 店主の佐々木久さん(77)によると、自身の体力の衰えと後継者不在が閉店の理由。1975年の開店以来、妻と二人三脚で切り盛りしてきたが、昨年10月に店を畳むことを決めた。
 中華料理の提供からスタート。25年ほど前から学生に人気の高い鶏肉天ぷら「ザーカイ天」と「からあげ」の定食2種類にメニューを絞った。
 ザーカイ天は計650グラムの鶏モモ肉を17~18個に切り分け、Lサイズの卵を3個使った衣で揚げる。空揚げは男性の握りこぶし大の1個約120グラムが5個並び、破格の大きさから「手りゅう弾」と呼ばれた。ともに大盛りご飯とみそ汁が付いて900円(税込み)だ。
 圧倒的な量で東北大や宮城教育大などの運動部の学生らに根強い人気を誇ってきた。消費税導入、鶏肉の仕入れ値の倍増などで何度か値上げに踏み切ったが、客足が遠のくことはなかった。
 店内は閉店を惜しむ学生や社会人で連日混み合う。宮教大野球部OBで仙台南高野球部監督の五十嵐進悟さん(40)=名取市=は「学生時代は練習後に先輩たちとよく訪れた。南高の野球部員も気に入っていたので閉店は寂しい」と名残惜しそうに語る。
 今春、常連客のブログで閉店決定を知った東北大OBらが北海道や神奈川、栃木両県など全国各地から来店しており、同窓会の場としても利用されたという。
 佐々木さんは「40年近く続けられたのは学生さんの『おいしかった』と帰っていく笑顔のおかげ。店を愛してくれて感謝しています」と話す。
 最終日の31日は午後4時55分から午後9時まで営業する。

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