「うっかり口に出した言葉で周りが引いてしまった」「敬語を間違えて上司を怒らせてしまった」。
こんな経験は、誰にでも一度や二度はあるもの。しかし、大事な場面での失言やコミュニケーションの失敗が、取り返しのつかないことになってしまう場合もあります。
エン・ジャパン株式会社が「2016年に身につけたい能力」を調査したところ、20代以下の若者が身につけたいスキルの第1位は「対人能力(55%)」でした。
とくに、上司や目上の人とのコミュニケーションは気まずくなる場面が多いので、スキルを身につけてうまく仕事を進めたいですよね。
『会話のしくじり 失敗から学ぶ「後悔の会話学」』(梶原しげる著、SBクリエイティブ)では、会話に関する多くの著書を持つ著者が、あらゆる「会話のしくじり」を紹介し、どうしたら「しくじり」を回避できるのかを解説しています。
今回は本書のなかから、しくじる人の話し方を4つ取り上げました。
■1:話がぶつかる
Aさん「いま、海外でも日本食ブームですよね。寿司屋ならハワイでは当たり前……」
Bさん「寿司ですか! 寿司ならどんなネタが好きですか?」
このような会話は完全にぶつかっています。
Aさんは日本食ブームについて話したかったのに、Bさんが勝手に「寿司」という単語に反応し、話の展開を無視してしまっているわけです。
相手が話している途中に自分の言葉をかぶせてしまう。相手の話をさえぎってしまう、
このようなぶつかりが起きると、相手は「この人、全然自分の話を聞いてくれていないな」と感じるもの。
このように話がぶつかってしまういちばんの理由は、相手の「話の流れ」に興味を持っていないから。流れを読まずに、相手の話のなかの単語に勝手に反応してしまっているというのです。
また、相手の話の展開を勝手に予想してぶつかることもあるでしょう。
こんなしくじりを防ぐには、とにかく「ぐっと堪えること」。特に話したがりの人は、途中で口を挟みたくなっても最後までしっかり相手の話を聞きましょう。
■2:「ふわふわ言葉」を使う
「絆を大切にして、みんなの強い気持ちを持ち続けていれば、必ずや明日への光となります!」
このような抽象的な言葉を並べたスピーチを聞いたことはありませんか? 話している人は気持ちがいいので、聞いている人もうっかり盛り上がってしまいますが、あとから思い出そうとしても思い出すことができない場合も。
このような「ふわふわ言葉」には、リアリテイもディテールもないからだそうです。スピーチなら聞き流すこともできますが、1対1の会話でこのような言葉を使っていたら、相手に馬鹿にされても仕方ありません。
相手の心に響かせるためには、曖昧な言葉は使わず、具体的に話すように心がけましょう。
■3:余計なことを言い過ぎる
大事な商談など失敗してはいけない場面で、緊張のあまり余計なことをたくさんいってしまう人がいます。このような人は大きな失敗をしなくても、相手にネガティブな印象を与えてしまいます。
プレッシャーがかかる場面での会話は、まず自分の体をまっすぐ相手に向けること。
それから相手の目を見て「はじめまして。私は◯◯と申します」と挨拶します。これだけで充分。相手に、「あなたの話をしっかり聞きますよ」という態度を示し、あとは聞くことに徹するのです。
なにもかも、自分からいう必要はないといいます。緊張した場面では、「相手が求めた情報についてのみ話す」くらいのスタンスでいる方がうまくいくそうです。
■4:段取りのことばかり考えている
飲み会のとき、いつの間にか二次会のお店を調べて予約してくれているような人はとても重宝されますよね。しかし、このような人は会話でしくじりがち。
たとえば彼女と2人で食事をしていても、段取り上手な人は次の行動のことばかり考えてしまい会話を楽しむことができないのです。
自分の興味が「目の前にいる人」ではなく「次の店」に移ってしまっていては、うまく会話をすることはできないでしょう。
友だちと歩きながら食事をする店を決めるときも、スマホで検索してばかりいたら、なんのために食事をするのかわからなくなってしまいます。
会話をしながら店を選べば、相手の好みや人柄がわかることもあるでしょう。
せっかく過ごす友人や恋人との時間は、段取りよりも目の前にある出来事を味わいましょう。
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「自分もこんなことやっていたかも?」「こういう人いる!」と思うものもあるかもしれません。
コミュニケーションはすぐに上達するわけではありませんが、ちょっとしたコツや心構えを知っていれば「しくじり」を減らすことができるでしょう。
(文/平野鞠)