すてきナイスグループ、粉飾決算疑惑で検察が強制捜査…過去6年ずっと粉飾か

資材と戸建て・マンションの2本立てのすてきナイスグループに5月16日午前、粉飾決算の疑いで証券取引等監視委員会と横浜地検が強制調査に入った。

 5月10日、2020年3月期は2ケタ増益の見通しと発表したことから買いが入り、株価は16日に年初来高値の1129円を付けた直後の粉飾決算疑惑だけに、株価は急落した。6月7日には年初来安値の545円まで崩落、約3週間で半値以下になった。6月13日の終値は613円。

 横浜地検と証券取引等監視委員会は、すてきナイスグループ本社を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで家宅捜索した。

 5月17日付毎日新聞は、こう報じた。

<関係者によると、2015年3月期決算で、ペーパーカンパニーに数十億円規模の資金を貸し付け、ペーパーカンパニーは、その資金でグループ傘下企業の不動産を購入。グループの連結決算で利益が出たように装い、本来の損失を隠した疑いがある。グループはこうした虚偽の有価証券報告書を関東財務局に提出したとされる。問題の有価証券報告書では、第1~第3四半期まで赤字だったが、第4四半期には大幅な黒字に転換。通期でも黒字となっていた>

 15年3月期の有価証券報告書によると、第1四半期は10億8600万円の最終赤字、第2四半期は同17億4400万円の赤字、第3四半期は26億3300万円の赤字。ところが、通期では一転して4億8800万円の黒字だった。

 架空取引で連結対象のグループ会社の利益をかさ上げし、本体の決算を最終黒字にしたという疑惑である。

●創業家出身の平田恒一郎会長兼CEOが退任

 すてきナイスグループは5月20日、同日付で木暮博雄社長が取締役に退き、後任社長に杉田理之取締役が就く人事を発表した。創業家出身の平田恒一郎会長兼最高経営責任者(CEO)と日暮清副会長も辞任した。

「経営陣の捜査への協力が多くなることを鑑(かんが)み、取締役会での迅速な意思決定のため、(トップを)変更した」と説明し、「引責辞任ではない」とした。

 杉田新社長は宮城県出身で、1983年に宇都宮大学農学部を卒業後、日榮住宅資材(現すてきナイスグループ)に入社。2010年に取締役、18年に子会社のナイス社長に就任。

 実は、すてきナイスグループの粉飾決算疑惑は15年3月期決算にとどまらない。14年~19年の決算で粉飾に手を染めていた疑いが浮上している。これらの年度でも、4~12月の第3四半期まで赤字だったのに、最終的には黒字に転換しているからだ。15年3月期決算と、まったく同じパターンだ。

社長に就いた杉田氏は記者会見し、捜査への協力を強調する一方で、「通常取引の一環であり、架空売り上げ計上による粉飾決算などに当たらないと認識している」と述べた。第4四半期に利益が集中するのは「不動産、住宅関連事業は、年度末に引き渡すことが多く、売り上げの計上がその時期に集中するためだ」と説明した。

●ノンバンク、日榮ファイナンスは1兆円倒産

 18年7月23日、創業者である平田周次名誉会長が急性心不全で亡くなった。享年92。周次氏は木材販売業界の立志伝中の人物だ。

 1950年、市売木材株式会社を設立。瞬く間に京浜地区から東日本、全国へと勢力を伸ばしていった。その後、建材や住宅設備機器、住宅用部材へと取扱い品目を拡大。62年、木材流通業界で初の東証2部への株式上場を実現。71年、社名を日榮住宅資材へ変更。73年に東証1部に昇格。2000年、社名をナイスに変更。07年、持ち株会社体制に移行し、社名をすてきナイスグループとした。

 88年に周次氏が体調を崩したため長男の恒一郎氏が社長の椅子を引き継いだが、バブル崩壊による不動産不況の直撃を受け、創業以来最大の試練に見舞われた。

 住宅ローン保証会社、日榮ファイナンスの経営破綻である。72年、日榮住宅資材、第一勧業銀行(現みずほ銀行)、横浜銀行、埼玉銀行(現りそな銀行)が主体になり、日栄ホームローン保証を設立。84年、日榮ファイナンスに商号を変更し、貸金業者として登録。バブルの時期に融資を拡大し、91年、東証2部に上場を果たした。

 だが、バブル崩壊で不良債権の山をつくり96年10月、横浜地裁に商法に基づく会社整理を申し立てた。負債総額は1兆円。巨額な負債を抱えて経営破綻する“ノンバンク倒産”の先駆けとなった。

 日榮ファイナンスの倒産は、すてきナイスグループの経営の根幹を揺るがす事態だったが、住宅ローン会社を共同で立ち上げた銀行が手を差し延べ、危機を乗り切った。

 18年9月末時点のすてきナイスグループの大株主は以下のとおり。筆頭株主が横浜銀行(持ち株比率4.95%)、2位がみずほ銀行(同4.94%)、3位がりそな銀行(同3.56%)、第4位は明治安田生命保険(同3.42%)。パナソニックが第9位で2.24%の株式を保有している。平田恒一郎氏は第7位で2.47%である。

 日榮ファイナンスとの関係で、これまで支援してきた3行はどう出るのか。これが、今回の粉飾決算疑惑の焦点のひとつだ。

●建築資材と住宅の二本柱

 すてきナイスグループの2019年3月期の連結決算は、売上高が18年同期比1.4%増の2429億円、営業利益は同2.1倍の14億円、純利益は同16.3%増の3億5000万円だった。

 建築資材部門の売上高は2.6%増の1714億円、セグメント営業利益は同6.3%減の28億円と増収減益。一方、住宅部門の売上高は同2.5%減の637億円、セグメント営業利益は3億円の黒字(18年同期は3億4000万円の赤字)に転換した。

 建築資材部門は、売上規模は大きいが利益水準は低く、儲らない体質が固定化している。マンション分譲は巨額の資金が必要な上に売れ残りのリスクも大きい。

 そこで、一戸建て住宅に力を入れている。基本的なコンセプトは「30歳で建てる一戸建て住宅」。家を建てるのは40歳を過ぎてからという、これまでの常識を打ち破り、30歳の夫婦でも購入できるような価格設定にした。売れ筋の価格帯を決めるやり方で原価を積み上げる方式はとっていない。

 16年11月、民事再生手続き中の菊池建設を買収した。菊池建設はヒノキを使った和風住宅を首都圏や静岡県で販売してきたが、注文住宅の主流が洋風に移ったこともあり、需要は低迷。16年3月、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。高齢化が進むなか、和風の住宅が伸びるとの思惑から買収したという。

 すてきナイスグループの19年3月期の戸建て住宅の販売戸数は743戸にすぎず、1000戸に届かない。

 20年3月期の連結決算の売上高は19年同期比0.9%増の2450億円、営業利益は同13%増の16億円、純利益は同14.1%増の4億円の見通し。2ケタ増益の期待から株価は上昇したが、もし粉飾決算と認定されれば、大幅な業績の見直しは避けられないだろう。

 杉田新社長は「通常の取引で架空ではなかった」と粉飾決算を否定したが、「資料を押収されており、改めて適法性を精査できていない」と歯切れの悪さを残した。
(文=編集部)

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