あなたは、口臭や体臭で、その人が持っている持病がわかるというお話をご存知でしょうか?
酒を飲みすぎると体臭が酒臭くなる……、臭いのきつい食べ物(ニンニクなど)を食べると毛穴から出る汗も臭くなる……こんなことは、みなさんわかっていることですよね。
しかし、病気になってしまった場合にも口臭や体臭が変化してくるらしいのです。
明治時代などは日本でも、その病気の種類を患者の体臭で判断していたというのですが、では、どんな臭いがするとどのような病気の疑いがあるのでしょうか?
今回は、病気のサインになる体臭のことを解説していきたいと思います。
甘酸っぱい臭いのする糖尿病
わかりやすいところでいえば、糖尿病にかかってしまうと、“甘酸っぱい臭い”がしてきます。昔、汲みとりトイレだった時代には、業者が汚物から立ち上る甘い臭いを判断して、家族の中に糖尿病の患者が混じっていることを予測することもあったといいます。
これは糖尿病が進行して、糖が上手に代謝されずにいると、エネルギー源が糖の代役として脂肪に交代してしまう。結果、アセトン(ケトン体)という物質が体内で生成され、臭ってくるといいます。
この甘酸っぱい臭いは、血液と一緒に全身に流れ、かいた汗や排出される尿、口臭などに出てくるのです。
その他の病気による体臭
病気由来の体臭としては、次のように言われているものもあります。においの判別は主観に因(よ)る部分もありますので、絶対ではありませんが目安になりそうです。
胃腸障害:酸っぱい臭い、卵の腐敗臭
糖尿病:甘い臭い、甘酸っぱい臭い
腎臓障害:アンモニア臭
肝臓障害:ネズミの臭い、ドブ臭い
便秘:便の臭い
痛風:腐った古いビールの臭い
過剰なストレス:玉ねぎの腐った臭い
ちくのう症:腐った臭い
トリメチルアミン尿症(魚臭症候群):魚の腐敗臭 ※肉魚介類、野菜など食べ物によって変わる
メープルシロップ尿症(乳児):メープルシロップ臭
フェニルケトン尿症(乳児):カビ臭
脂漏性皮膚炎:皮脂臭
自律神経失調症:炊きたてのご飯の臭い
パーキンソン病(甲状腺機能亢進症):皮脂腺の体臭
コレラ:腐敗臭
腸チフス:焼きたてパンの臭い
歯周病:腐敗臭
ガン:甘い臭い
死の直前:松材の臭い
※参照:市立芦谷病院広報誌HOPE Plus「Chapter97.病はにおう」より
さらに、海外の症例では、飼い主が患った病気を愛犬が見つけたということもあるそうです。愛犬といえば、ベッドで共に眠ったり、褒めるためにハグしたりと親密に接していることが多い。恐らくそこから臭いの変化に気がついたのでしょうか。さらに海外には、犬特有の嗅覚を活かして、がんを見つける“がん探知犬”の訓練もあったそう。
肝性脳症を起こす便秘で強烈なアンモニア臭が体から……
筆者自身、昨年末に大量飲酒が原因の肝性脳症で意識障害を患い、救急病院に緊急搬送されたときに体からアンモニア臭がする現象を体験しました。
これは血中に高いアンモニア値が出ることで起こってしまう症状で、肝臓の状態が悪く便秘状態でいると、肝臓で分解できないアンモニアが血液中に流れ出し、それが脳に回って意識障害を起こしてしまうわけです。
自分の全身から漂う強烈なアンモニア臭、一体何が起こったのか、非常に驚いたのを覚えています。
『年末年始に頻発注意!肝性脳症の人に起きた10のこと』
筆者自身も嗅いだことのある末期ガン患者の臭い
嗅覚のいい筆者は、末期がんのホスピスに見舞いに行ったときにも、様々な臭いを嗅いだ経験もありまして……。
果物をコンデンスミルクで煮詰めたような臭いがしている患者さんがいたり、甘ったるいたくあんの臭いがしている患者さんがいたり、もちろん患部によってその臭いは違うと思いますが、全体的に末期がん患者のみなさんは甘い臭いを放っている印象が強かったです。
ガンを切除手術する外科医は、患部を開いた途端に、がん細胞特有の臭いがするという証言もあります。
その際には、新茶の臭いや化学調味料などに使われる昆布に含まれるグルタミン酸の臭いがするといいます。
まとめ
人間の体の新陳代謝に変化を起こすのが病気。
なかなか自分の体臭を嗅いで、「いつもと違う」と判断するのは難しいと思いますね。
やはり最良なのは、ひとつ屋根の下に暮らす家族に判断してもらうことだと考えます。「なんだか違う臭いがする」「変な臭いがしている」と気づいてもらうことが一番ではないでしょうか?
別々の寝室を持つご夫婦であれば、互いの寝室や朝一番の体の臭いをチェックし合うこともいいですし、子供に嗅いでもらうのもいいかもしれません。
いつもと違う臭いは“赤信号”。いつもなら恥ずかしい体臭の変化を家族に指摘されたとしても、否定したり不機嫌になったりせずに、一体どんな風に体臭が変わったのかをしっかりと聞いておいた方がいいと思います。
明らかに臭いが変わった場合には、専門医を受診することをおすすめします。
(C)写真AC
(執筆者: 丸野裕行)