首都圏では近年、常にどこかのエリアでタワマンが建っており、湾岸エリアにいたっては、どこを見ても大規模な建設現場という状況だ。しかし、今、タワマンの供給過剰が叫ばれ、中国人投資家も投げ売りし始めたという噂も聞こえてくる。一方、住人たちも購入前は予測だにできなかった数々の問題に直面していた――悲劇の現場を徹底リポート!
◆プールの温水をやめ、ラウンジも有料制に
「タワマンは、そのスケールメリットによって1戸当たりのコストが抑えられます」
マンションデベロッパー営業担当者がよく口にするセールストークを全否定するのは、不動産ソリューションビジネスを展開するオラガ総研代表の牧野知弘氏だ。
「タワマンには、規模が大きいからこそかさむコストがいくつもある。例えばエレベーター。数十階分の距離を高速移動するタワマン用のそれは高性能なものが採用されており、1基あたり10階程度のマンションのエレベーターの倍以上の価格で、耐用年数も30年です。また、震災対策で非常用発電機を設置するタワマンが多いが、この1台の価格も数千万~1億円はする。しかも一度も出番がなくても15年で交換する必要があります」
住宅ジャーナリストの榊淳司氏もこう付け加える。
「十数年ごとの大規模修繕も、タワマンは一戸当たり250万円と、通常マンションの2倍以上の費用がかかるとみられている。足場の組めない物件の外壁改修は、屋上からゴンドラを吊って作業することになる。雨や風の強い日は作業ができず、工期や工費もやってみなければわからない。そもそも工事の担い手がいないかもしれない。3年ほど前、東京の湾岸エリアのタワマンの管理組合が大規模修繕の見積もりを大手ゼネコン5社に依頼したところ、全社辞退となったこともある。ゼネコンにとって20億円程度の案件など取るに足らず、不確実性が多い大規模修繕はリスクが多いのでしょう」
ちなみに大規模修繕の費用を負担するのは住人自身だ。管理組合は住人から毎月、修繕積立金を徴収しているが、積立額が十分でないタワマンも多いようだ。国交省は、20階建て以上のタワマンに必要な修繕積立金の目安として、「月206円/㎡」という指針を策定している。しかし『日経新聞』(3月26日付)によれば、全国900棟のタワマンのうち8割弱が未達で、目安の半分に達していない物件も1割あったという。
そんななか、各タワマンの管理組合では、修繕積立金の値上げも提案されているというが、実現は厳しい。住宅ローン支払いと現状の修繕積立金、それに管理費ですでにカツカツという住人が少なくないからだ。
有明のラウンジや温水プール完備のタワマンに住む持田浩平さん(仮名・42歳/会社員)は言う。
「月々のローン支払いは13万円で、加えて修繕積立金が1万1000円、管理費と駐車場代が3万3000円毎月かかる。管理組合では、修繕積立金の値上げが議題に上っているらしいのですが、反対が多数。それどころか、年間2000万円の管理費がつぎ込まれながら、利用者が限られているプールの温水設備をやめたり、ラウンジ利用を有料にして管理費を値下げする案も出ているほど。みんな、ギリギリの経済状況なんです」
修繕費用が賄えず“バベルの塔”と化してしまう物件も、今後続出する可能性があるというわけだ。
それでもあなたはタワマンに住みたい!?
― タワマンの悲劇 ―