お堅い施策に親しみを持ってもらおうと行政が多用するキャラクター。仙台市でも健康や防災など分野ごとに生み出され、その数は90に迫る。市政情報発信に一役買ってはいるものの、部局縦割りと相まって乱立気味だ。仙台の代名詞となる存在は見当たらず、「多過ぎ」との声も上がる。
主なキャラは表の通り。市広報課が把握するのは89種。仙台市が県などと運営主体を構成する仙台・宮城観光PRキャラの「むすび丸」、仙台・青葉まつりの「青葉すずのすけ」などを加えると97に膨らむ。
着ぐるみは少なくとも5種類ある。最古参とみられるのは市選管のマスコット「てとりん」。2005年の完成以来、市長選や国政選挙で投票を呼び掛ける。
キャラ設定は仙台藩祖伊達政宗にちなんだものが少なくない。消防局の「防災まさむね君」は三日月付きのヘルメットが特徴。市博物館の「まーくんとめごちゃん」は政宗と正室愛姫(めごひめ)のファンがモチーフだ。
若林区では、区単位で珍しいPRキャラ「わかちゃん」が活動する。区民まつりなどに駆け付け、健康増進を市民に促す。
分野別から地域別まで、キャラの種類こそ多いものの浸透度には疑問符も。青葉区の無職武田良子さん(80)は「知っているのは(ごみ減量・リサイクルの)『ワケルくん』ぐらい。ほかはさっぱり」と話す。
ある市議は「多過ぎる上、仙台の代名詞となるキャラはいない。情報発信に生かし切れていない」と手厳しい。
キャラを持て余した自治体が、リストラに動いたケースもある。大阪府は14年、40以上あった一部を整理し、生涯スポーツ推進の「モッピー」を統一キャラにした。
仙台市は「それぞれが活躍している」(広報課)として整理しない方針。郡和子市長は「宮城県南三陸町の『オクトパス君』や気仙沼市の『ホヤぼーや』のようなものは持っていない」と「顔役」不在を認めつつ、新キャラの制作には否定的な姿勢を示している。
<効果の検証重要/東海大の河井孝仁教授(行政広報論)の話>
金をかけていないキャラクターほど、惰性で使い続けてしまう。効果や目的を明確化せずに使い続けるなら、たくさんいても意味はない。活用の結果、施策への理解度や施設の認知度が向上したと定量的に検証することが重要だ。