秋の味覚であるブドウの産地と言えば、山梨県や長野県などが有名。
しかし一見、農地が少なく見える大阪もブドウの生産量全国7位。デラウェアにいたっては3位の健闘ぶりで、大正時代の終わり~昭和の初め頃には全国1位だったこともあるそう。
そんな大阪産ブドウにこだわるワイナリーがある。
それだけでも珍しいというのに、さらに大阪名物、たこ焼きに合うように作られたシャンパン“たこシャン”まで生み出した。
作っているのは、ブドウ園広がる大阪柏原市のカタシモワイナリーさん。まさに地産池消のワインである。
この“たこシャン”、09年ものは今年6月に販売。3000本が大阪各所の飲食店に卸されるなりすぐ売りきれた。
味わいはさっぱりとした辛口の飲み口で、「フルーティーでフレッシュな柑橘系の香り」。この口当たりが「こってりとしたたこ焼きにピッタリ」だそう。
10年度ものも今年のブドウを使い来春発売予定。目標は1万本だ。
なぜ本数少なめかといえば、「原材料や手作業、設備等の関係から、現在の最大量が約1万本なんです」。
作り方は一本一本瓶内発酵。澱を除くために瓶を回すデゴルジュマンも手作業と、大変な手間がかけられている。
サイズが250ミリと小さめなのも、多くの人に飲んでもらえるように。もちろん小さくすることで手間も余分にかかる。
使われているブドウは大阪産デラウェア100%。しかし今後は100%に保てるか不明だそうで、「最低でも50%は大阪産ブドウを使いたい」と言う。
理由は農作物である以上、栽培状況が読めないということ。そして大阪ブドウ園の後継者不足による農園の撤退、それによるブドウ生産量の低下だ。
農園の後継者不足の波は、言うまでもなく大阪でも顕著。
現在、柏原市にあるブドウ園の中で後継者が決まっているのは、たった10数軒。現在の農園主の平均年齢は70~80歳で、大阪の土地は売価が高いため農地を売ってしまうケースも多い。
それもこれも見栄えを良くしなければ売れない、果物作りの大変さのせい。
そこでこちらのワイナリーでは、ワイン用に“見た目が悪くても味の良い”ブドウ作りにチャレンジ。
生食では嫌われる種もワインに使うなら問題無い。農薬を減らし手間を減らした栽培方法で、美味しいブドウが完成。このブドウを使ったスパークリングワインで2年前、賞も獲得したそうだ。
このやり方が広がれば、お年寄りや経験の少ない後継者でもブドウを作ることができる。
すぐには難しいかもしれない。しかし成功すれば大阪のブドウを守り、結果的にワインの味もあげられる。というのがワイナリーの考えだ。
来年作られる“たこシャン”は手間暇かけた1万本。卸されるのはリカーショップではなく「大阪のブドウ畑を守りたい」という想いに賛同したお店さん中心。
ワインだからといってチーズやフレンチ&イタリアンだけじゃない。粉もん×シャンパンなんて、意外な組み合わせで新しい可能性が開けてくる。
大阪の本気、味わってみては。
(のなかなおみ)