たばこ 大幅値上げ ため息、決断、工夫… 小売店は閑散

増税に伴うたばこの値段が1日、大幅に引き上げられた。4年ぶりの値上げで、幅は過去最大。前日まで駆け込み需要に沸いた小売店やコンビニでは、買い求める客の姿も少なく、一転して閑散とした。禁煙者が増え、長期的には医療費の減少が期待される一方、葉タバコ農家やたばこ各社からは悲鳴も上がる。値上げを機に「たばこ離れ」はぐんと進みそうだ。
 ◇売店    
 JR新宿駅の売店の女性店員は「今日は全然売れない」と嘆く。午前8時過ぎまでに売れたのは10箱ほど。普段の約3分の1に落ち込んだ。銘柄の値段シールは今朝張り替えたばかり。400円台の表示が並び、「これだけ高いとやめちゃうよね」と苦笑した。
 同駅西口前の喫煙スポットには出勤途中のサラリーマンらが集まった。東京都豊島区の会社員、吉田国宏さん(50)は買いだめした3カートンを吸い終わったら、禁煙するつもりだ。「値上げは家計に響く。やめようと思っていたのでいいきっかけです」と話す。一方、横浜市港北区の男性会社員(58)は「食事と一緒でやめられない。1箱の値段が1000円になったら禁煙を考えるよ」と話し、一服を楽しんだ。【馬場直子】
 ◇メーカー  
 たばこ各社は、値上げした1日以降、大幅な販売減を見込む。1箱当たり110~140円という大幅な値上げショックに伴うたばこ離れに歯止めをかけようと、人気銘柄のブランドイメージや味・香りを向上させる取り組みを急ぐ。
 国内たばこ首位の日本たばこ産業(JT)は「値上げ後の価格水準でも納得して吸ってもらえるように味に磨きをかける」と説明。500億円以上を投資して生産設備を充実、たばこの風味を向上させたり、パッケージを高級感があるデザインに変更し、カッコよさを演出するなど、さまざまな工夫を凝らす計画だ。
 また、都市部を中心に屋外など公共の場での喫煙スペースを確保し、愛煙家が一服しやすい環境を整えたいとしている。
 嫌煙の風潮が強まる中での今回の大幅値上げは、業界にとって「過去にない逆風」で、メーカー関係者は「値上げにもめげず、吸い続けてくれる愛煙家を大事にしていくしかない」とため息を漏らす。【井出晋平】

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