たばこの放射性物質について(米政府の解説)

この御方は、こないだ「たばこ会社が絶対客に知られたくない真実… 煙草には放射性物質が入っている」で紹介したUCLA医学部Hrayr Karagueuzia教授。米たばこ業界が放射性物質のことを半世紀以上隠蔽していた事実を先月公表した人ですよ。
あの記事には、こんなコメントが沢山寄せられましたよね。
「既出。こんなの昔から知ってる」
「少量。この程度で騒いでたらキリない」
「肥料起源。たばこに限った話じゃない」
まあでも「わしゃそんな気休めで安心できないぞ、なんか信頼できる筋の詳しい情報はないの?」という方もいると思うので、米国環境保護庁(US Environmental Protection Agency、日本の環境省に相当)がサイトに出している解説を訳しておきますね。
 
たばこの煙
たばこの煙は被曝のもとには見えないが、あの煙には放射性物質が少量含まれており、吸うとそれが肺に入ります。放射性粒子は肺の組織に留まるため、長年吸い続けると大量の放射線量になる恐れも。放射線は喫煙者が肺がんになる主な原因のひとつかもしれません。
どれだけの人がたばこで放射線に晒されているのか?
米国肺協会によると、米国の喫煙者人口は成人4800万人、未成年者480万人。つまりアメリカ全人口のうち約5300万人がたばこの煙で直接被曝している計算になります。
アメリカ疾病管理予防センターによると、成人喫煙者の80%はティーンのとき煙草を吸い始めた人で、35%は18歳になるまでに毎日吸うのが習慣になっています。成人喫煙者のうち39%は1日1箱、20%は1箱より多く吸っています。
喫煙はアメリカ国内で起こる予防可能な死亡の原因のトップで、年間44万3000人、5人にひとりはこれで亡くなっています。喫煙に関連付けられる肺がんによる死者の数は年間12万3000人。5人に1人近い割合の人が喫煙絡みで死んでおり、これはアルコール、自動車事故、自殺、AIDS、殺人、違法ドラッグを全部合わせた数より多いのです。
喫煙者に加え、セカンドハンドスモーク(副流煙)の受動喫煙にも疾患リスクがあることが分かっています。一部の発がん性物質は、喫煙者が吸う主流煙よりセカンドハンドスモーク(副流煙)の方が2~5倍濃度が高いことを示す研究さえあります。他人が吐くたばこの煙を吸った結果肺がんになって死亡する成人は毎年およそ3400人。現在たばこを吸っていない人でも、空中のたばこの煙が原因で心臓疾患にかかって死ぬ人は推定4万6000人にのぼります。 セカンドハンドスモークには4000種を超える化合物が含まれています。うち69種はホルムアルデヒド、鉛、ヒ素、ベンゼン、放射性ポロニウム210など既知の発がん性物質です。
なぜ煙草に放射性物質が入る?
たばこ製造に使用するたばこの葉には放射性物質が含まれています。特に鉛210(lead-210)とポロニウム210(polonium-210)。たばこの葉の放射性核種は、そのほとんどが土壌と肥料から入ったものです。
土壌のラジウム含有量が高いと、成育中の作物の中のラドンガス放射量が増えます。ラドンは速やかに崩壊してゆき、固体の高放射性金属(ラドン崩壊生成物)になり、これがチリ粒子に付着し、粘着性のあるたばこの葉に集まっていきます。葉の繊毛から染み込む化合物は水溶性ではないため、雨が降っても洗い流されません。葉を硬化して切り刻んで煙草にするまでの間も粒子はずっと、葉に留まったままなのです。
鉛210とポロニウム210は土壌から直接たばこの葉に吸収されます。しかしここでもっと重要なのは、葉の両面に粘着性のある小さな毛(毛状突起)があるため、空中の放射性粒子がそこにくっついて集まってしまうこと。
例えばたばこ業界で人気のリン酸肥料。あれにはラジウムとその崩壊生成物(鉛210とポロニウム210含む)が含まれています。このリン酸肥料をたばこ畑に毎年撒くと、鉛210とポロニウム210の土中濃度も上がってしまうんですね。
たばこを吸うとどうなる?
研究の結果、肺に吸い込む時、たばこの煙には鉛210とポロニウム210が存在することが分かっています。たばこの葉に含まれる鉛210とポロニウム210の濃度は比較的低いのですが、塵も積もれば山で、喫煙者の肺の中にたまると非常に高濃度になる恐れもあるのです。
たばこを肺に吸い込むと、肺の通り道の気管支が枝分かれする場所(細気管支)に煙が当たり、たばこの煙に含まれるタールがそこに溜まっていきます。そのため細気管支の中でも非常に大事な部位の組織に、鉛210とポロニウム210が吸い寄せられてしまうのです。研究では、普通の市販のタバコにフィルターをつけても、喫煙者が肺に吸い込む煙から放射性物質は微量しか除去できないことが分かっています。溜まった物質のほとんどは鉛210ですが、この鉛210(半減期22.3年)が崩壊して支配的な放射性核種になるにつれポロニウム210(半減期138日)は急成長してしまうのです。こうして時間の経過に伴い、細気管支の組織に直にたまるポロニウム210は非常な高濃度となり、この細気管支に局所的に放射線量が集中するのです。
—訳おわり—
つまり複合して肺にホットスポットができてしまうということですね。
因みに死亡率ってどれぐらいなのかなと思って、UCLAのKaragueuzia教授のチームが独自に試算してみたら、たばこの中の放射性粒子がもとで今後25年で死亡する可能性のある人は喫煙者1000人のうち120~140人と出たそうですよ。
「我々も肺がんの原因はタバコ中の化学物質だけだと思っていたが、肺にこうした『ホットスポット』ができることは業界も学会も認めている。そうなるとアルファ線が原因で悪性腫瘍が長期的に発達してる可能性も高くなる。ラッキーな人はα線被曝した細胞が死んでくれるが、死ななければ変異してがん性細胞になる恐れもある」(Hrayr Karagueuzia教授)
こういうのきちんと分かった上で吸ってるなら構わないんですけどね。日本政府にもこういうページがあったらいいのにな、って思います。

タイトルとURLをコピーしました