だから、家は南向きじゃなくていい!北向きの窓で十分な実例を建築家・内山里江が紹介

人生でいちばん高価な買い物、マイホームをせっかく建てたのに、「こんなはずじゃなかった」と後悔する人があまりに多いのはなぜなのか?

気鋭の建築家・内山里江氏は言います。

「日本人が家づくりに失敗する最大の理由は、たとえば『家は南向きじゃなきゃダメ』とか『窓は大きいほうがいい』といった『間違った常識』によるものです。私は本書でそうした間違った常識をすべてひっくり返します」

内山氏の最新刊『家は南向きじゃなくていい』から、間違いだらけの家づくりをしないための方法を連載形式でお届けします。

前編はこちら<気鋭の建築家が喝破!素人が陥る間違いナンバー1は、「窓は大きくてたくさんあるほうが良い」

直射日光より「明かりだまり」

室内に日光の明るさを取り入れるのは南向きの窓でなくても可能です。実は、北でも東でも西でも、どの方角でも大丈夫です。

それを可能にするのが「明かりだまり」です。直射日光ではなく、日光がたまる空間から間接的に光を取り入れるのです。間接的にとはいっても、薄暗いわけでは決してありません。直射日光のようなダイレクトでギラギラした明るさではありませんが、「明るいな」と感じるには十分なものです。

こちらの写真を見てください。北西の角が切り取られた逆L字の敷地に建てられた平屋のおうちです。人目を避けるため、道路に面している南側には窓を一切つけたくないとリクエストされましたが、住宅がひしめき合う密集地であり、平屋で明るさも妥協しないのは、本来であればなかなか難しいケースです。

このおうちに光を取り入れるポイントは、へこんでいる北西のスペースを最大限に活用することでした。ここに面したリビングをキッチンとつながる形で高天井にし、北側の高い位置に窓をつくることで、逆L字のへこみスペースを「日光がたまる場所」とし、この明かりだまりから室内に明るさを取り入れるのです。

窓は高い位置につけられているため、隣接する家からの視線を感じることもありません。また、この家の場合、リビングの斜めの位置に設けた中庭からも東の日が入りますので、直射日光による明るさとは違う、あたたかな明るさを常に感じることができます。逆L字の敷地という異形地ならではの、光の取り込み方です。

窓は適材適所に

「窓は適材適所に」の意味が、おわかりいただけたでしょうか? 南向きの窓でなくても、たくさん窓をつくらなくても、明るく快適な室内環境を整えることは設計の工夫次第でいくらでも可能なのです。

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