140字以内で文章を投稿するミニブログ「ツイッター」を始める作家や評論家が増えている。プロが作品を発表したり、交流したりする様子が、ネット上でリアルタイムに見られるだけにファンの注目度も高い。4月には公募による「Twitter小説大賞」も発表された。これまでにないメディアを舞台にした新しい“文壇”は誕生するのか?(磨井慎吾)
◆作品にも影響
ツイッターを利用している作家、辻仁成さんは3月、「小説書いたら、どうなるだろう」と書き込み、「つぶやく人々」というタイトルで小説の連続投稿をスタート。ツイッターに熱中する小説家が主人公で、4月に第一部が終了した。作家、高橋源一郎さんは「辻さんの最高傑作ではないか」とツイッターで評価した。
高橋さん自身も連日、投稿している。「従来のホームページがしっかりコンテンツを並べなきゃいけない百貨店なのに対し、ツイッターはコンビニのようなもの。気軽で使いやすい」。ファンからの質問にも気さくに応じ、フォロワー(登録読者)数が1万6千を超える人気ぶり。作品にも影響を与えている。
高橋さんは文芸誌「群像」で連載中の小説「日本文学盛衰史 戦後文学篇」に、ツイッター形式を取り入れた。
高橋さんはツイッターを「小説的な空間」と位置付ける。「絶えず外部にさらされており、雑多な公共性がある。私の他に見知らぬ他人がいて、作者もコントロールできないものがある。小説家はそういう空間に慣れている。他の作家の皆さんも、そういうところを面白く感じているのでは」
ツイッター上で、高橋さんは奥泉光さんや島田雅彦さん、大森望さんら他の作家とも交流を楽しむ。平野啓一郎さんや角田光代さんといった作家もツイッターに登場。文学論から世間話まで幅広い話題は、ファンにとっても魅力的だ。
また、ツイッターを利用した「Twitter小説大賞」(ディスカヴァー・トゥエンティワン主催)が創設、2357通の応募から4月に受賞作品が発表された。いずれも140字以内に書かれたもので、大賞作品は郵便局での恋が描かれている。
◆「文学」の脱皮
“文壇”のようなネットワークが緩やかに形成され、新たな表現が生まれつつあるようにもみえるツイッター。一方で、ITジャーナリスト、佐々木俊尚さんは、従来の文壇がネット上で再現されることはないとみる。
ツイッターなどのソーシャルメディアにより、人間関係のフラット化が進んでいる状況を挙げ、「たとえばかつての文壇のような、(作家・評論家・編集者らによる)閉じた人間関係に基づいた政治性は意味をなさなくなる」と指摘。「今後は、書き手と読者が直接コミュニケートする形になるのでは」と、新たな文学コミュニティーの未来像を予想している。