どうなる? 中外製薬が初の新型コロナ専用治療薬「ロナプリーブ」を販売

「画期」とまで言い切れないが、「朗報」とは言えそうだ。厚生労働省が先週、中外製薬の新型コロナウイルス感染症治療薬「ロナプリーブ」の製造販売を特例承認した。肥満や高血圧などの持病を抱えた重症化リスクのある軽度・中等度患者向けで、治験では入院や死亡などのリスクが約7割減ったとされる。

 新型コロナの治療薬としては国内ではこれまでに「レムデシビル」「デキサメタゾン」「バリシチニブ」の3製剤が製造販売を承認されてきた。ただいずれも「ドラッグリポジショニング」と呼ばれる、いわば既存薬からの転用。レムデシビルは本来、抗ウイルス薬、デキサメタゾンは抗炎症薬、バリシチニブはリウマチ薬として開発されたもので、しかも適用対象は基本的に重症患者に限られていた。

■薬価定めず国が一括購入

 その点、ロナプリーブは初の新型コロナ専用治療薬で、軽度・中等度向け。新型コロナから回復した人の2種類の中和抗体――「カシリビマブ」「イムデビマブ」を組み合わせて点滴投与することから「抗体カクテル療法」とも呼ばれている。

 創薬したのは米バイオ企業のリジェネロン・ファーマシューティカルズで、中和抗体がウイルスの突起に作用して宿主への侵入を阻害する仕組み。中外製薬とその親会社であるスイスの製薬大手、ロシュが世界での販売を担う。治験では重症化リスクのある患者の死亡率などが7割減ったのをはじめ、入院期間の短縮も確認できたという。

 ただ人工呼吸器などの装着を必要とする患者は投与によって逆に症状が悪化したとの報告もあったほか、発症8日目以降の有効性は未確認。発症後の速やかな投与が不可欠となる。

 それに抗体を使った医薬品(抗体医薬品)は「製造が難しく、供給量が限られるため高額になりやすい」(製薬業界筋)。1回の投与で通常だと2万~3万円。高いものだと十数万円になるとされている。

 今回、国はロナプリーブの薬価を定めず、中外製薬との間で一括購入契約を締結。国が買い上げて使用の都度、医療機関に供給する体制を取る方針で、自宅療養者などは当面、投与の対象外となる可能性が高い。コロナ退治にはいま少し時間を要しそうな情勢だ。

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