なぜ、法律事務所のTVCMは、胡散臭いのか?/中村 修治

先月、消費者金融大手の武富士が会社更生法の適用を東京地裁に申請した。負債額は約4336億円。過払い金の未請求分を含めると1兆円規模に達するそうだ。そんなニュースの裏では、法律事務所のTVCMがいっぱい流れている。
アコムは、「むじんくん」。武富士は、「エンむすび」。レイクは、「ひとりででき太」。アイフルは、「お自動さん」。プロミスは、「いらっしゃいましーん」。いまとなっては懐かしい響きすらある。こんな無人契約機のTVCMを消費者金融各社がこぞって放映していたのは、1995年ころの話である。そんなマス広告の効果もあって、サラ金やクレジット会社のカードローンなどから借りたことがある人は、ピーク時には、2000万人。成人の約5人に1人がお世話になるまでに拡大したと言われている。
現在でもその数は、1400万人。その内、返済困難な多重債務者は、200~300万人。合計貸出額は25~30兆円と試算されており、利息制限法(金利15.18~20%)と出資法(29.2%)の2つの法律が存在したお陰で生まれた差額が過払い金で、大きな市場を形成した。その額は、10兆円にのぼると言われ、そこに目をつけ盛んに広告を打っているのが多重債務整理を得意とするところの法律事務所なわけである。
機動戦士ガンダムに登場する黒い三連星が使用した攻撃フォーメーションに「ジェットストリームアタック」というのがあるが・・・
パチンコのCM

消費者金融のCM

法律事務所のCM
これって、弱い消費者を食い物にする「ジェットストリームアタック」みたいなものではないか。完璧なフォーメーションである。消費者金融を悪と定義して、法の名の下に、多重債務者から上前をはねる。2006年の最高裁判決で、グレーゾーン金利が違法とされた結果の焼け太りである。
先月、消費者金融大手の武富士が会社更生法の適用を東京地裁に申請した。負債額は約4336億円。過払い金の未請求分を含めると1兆円規模に達するそうだ。そんなニュースの裏では、法律事務所のTVCMがいっぱい流れている。
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資本主義社会なのだから、過払い金10兆円に群がるマーケットができるのは仕方ないと言われればそれまでなのだが・・・法律事務所が、消費者を食い物にする「ジェットストリームアタック」のフォーメーションのひとつになることはどうも合点がいかない。
日弁連は、10年後には、法曹人口5万人をめざしているらしい。そのひとつに、司法試験を新制度が改訂・・・合格率が毎年3%の狭き門は一挙に開かれ、毎年1000人程度だった合格者は、ここ数年2000人を越えている。
弁護士人口が増えたら→競争原理が働き→安くて質の高い弁護士が増えるというロジックらしいのだが、日本人の文化体質的に、これから訴訟件数が極端に増えるとは思えない。確実な市場が見えない中での、法曹人口の急増は、「事件漁り」をする弁護士を増やしはしないだろうか・・・。過払い金市場に群がる法律事務所のTVCMからは、そんないびつな法曹界が透けて見えてくる。
アメリカでは、弁護士の数多くて、、、訴訟の数を確保しないと、その人達のおまんまが食えない。「ジャパン発見伝」(山本茂著)から抜粋させていただくと、アメリカでの年間訴訟件数は、1800万件。その訴訟に注ぎ込まれる弁護士費用は、約8000億ドル。日本円に換算すると、約80兆円。アメリカの国防費の3倍にあたる巨費となっている。その訴訟費用8000億ドルを維持するために、アメリカの法律事務所の人達は、事件でもない事件を事件にして訴訟を起こす。

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