政府の休校要請の延長なし。明るい兆しがみえてきた
日本政府は新型コロナウイルス感染症対策として行ってきた小中高校などでの全国一斉の臨時休校の要請について、延長しない方針を示した。安倍晋三総理大臣は2月29日の記者会見にて、3月2日から春休みまでの休校を要請しており、全国の99%の小中高などが休校していた。一方でイベント開催については「感染拡大の防止に十分留意してほしい」と語り、慎重な対応を主催者に要請する考えを示した。
ここ数カ月、新型コロナに関しては暗い話題しかなかったなかで、こういったニュースを見て、やっと明るい兆しが見えたようにも思えた。判断は感染状況に応じて地域ごとに行う見通しだが、それでも、4月に子どもたちが新学期を迎えられれば、ドンヨリとしてしまった日本全体の雰囲気も、少しは変わってくるのではないだろうか。
新型コロナの政府対応を巡っては、諸外国と比較をされ、批判が起きていた。たとえば、感染を調べるPCR検査の実施について、隣国韓国では3月18日時点で28万6716人に対して行ったのに対し、日本は3月17日時点で日本1万5655人だった。
これは、日本は軽症者や無症状者を検査せず、熱が4日続くなど感染が強く疑われる人や感染者との接触者に限定したためで「感染者と接触した人が症状を示した場合にのみ検査を行う」ことを推奨しているWHOの推奨に沿っているとも言っていい。一方で、感染者の数を作為的に増やさないようにしている、症状があってもなかなか検査をしてもらえない、などと指摘を受けていた。
「隠れた感染者がいる」という見立てに根拠はなし
ではその後、日本の感染者数は世界に比べてどのように推移したのか。報道によると、3月21日時点で中国では8万人を超え、イタリアは約4万7000人、スペインが約2万人、そして韓国は8800人だ。日本はというと、1015人(クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗船者を除く)だ。これは「PCR検査を実施していないから」と言われているが、では死者数を見るとどうだろうか。
イタリアが4000人を超え、中国が約3200人。そして韓国も100人を超えた。一方で日本はクルーズ船を除いて35人だ。人口比でみるとG7諸国の中でも圧倒的に少ない。これは日本政府が、何よりも医療の崩壊を防ぐことを第一にした結果ではないか。
都公衆衛生医の垣本烈氏はプレジデント2020年4月3日号で日本のコロナへの対応や感染状況について「検査態勢の不備は確かにあるものの、判明した患者数を遥かに上回る莫大な感染者が既に偏在している、といった扇情的な物言いには根拠がない」と述べている。
感染防止キャンペーンの偉大な勝利と言うべきだ
実は今年度は季節性インフルエンザの大流行が予想されていたのだが、1月下旬には報告数が減り始めていたという。
「新型コロナウイルスがマスコミの話題をさらい、予防のためにマスクや手洗いが励行され始めたのと並行して、例年なら激増するはずの季節性インフルエンザは(年を明けてから)減少に転じた。(中略)これは感染防止キャンペーンの偉大な勝利と言うべきだろう」
さらに、こう付け加えた。
「この無視されている事実は、今後の見通しを明るくする。(中略)新型コロナウイルスの感染様式はインフルエンザと同じであり、普通に考えればコロナウイルスの感染も、こうした手洗いや各種の感染防止措置励行によってかなり抑え込まれているはずだ。季節性インフルエンザをこれだけ抑え込めている以上、日本の最終的な被害は各国に比べて小さくなるだろうと考える。それは、執拗に手洗いなどの感染防止措置を実施した国民一人一人の努力の結果だ」
ダイヤモンドプリンセス、「やっと褒めてもらえた」(政府関係者)
そして、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」への政府対応についても、多くの議論が巻き起こっていた。日本政府は乗客を降ろさず、船内に隔離した。これにも国内外から「船内の拡大を広めている」などと批判を受けた。
しかし、クルーズ船を担当した、政府関係者の男性は「もしあそこで乗客を降ろしていたら、横浜が武漢になっていましたよ」と打ち明ける。
「そもそもクルーズ船はイギリス船籍、運航会社はアメリカの会社。日本は入港拒否もできましたが、日本人が1300人もいたので、人道的観点から支援に入ったのです。日本が横浜港に船をとどめていたとき、多くの方々から反論を受けましたが、そもそも乗客約3700人を受け入れてくれる施設はありません。武漢にいる日本人らをチャーター便で帰国させた際に利用したホテル三日月は色々とお願いしていた中で唯一OKをしてくれた宿だったのです。
反省点はなかったなどとは決して言いません。政府はたしかに混乱していました。しかし現場の職員は歯を食いしばりながらやりました。各方面からいろいろな厳しいご意見をもらいましたが、現在は海外からダイヤモンド・プリンセス号の対応に関する問い合わせが殺到しています。『感染対策の参考にしたいので何をしたのか、詳細に教えてほしい』、と。なので、今は海外に情報提供をしています。やっと、われわれがやってきたことに対して、お褒めの言葉をもらえるようになりましたよ」