(本記事は、藏本猛Jr氏の著書『誰も知らなかったラーメン店投資家になって成功する方法』=合同フォレスト、2019年10月10日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
■なぜ、日本人はラーメン店に行列するのか?
ほとんどの人が人気ラーメン店に行列ができている光景を見たことがあると思います。
それほど日本人はラーメンが好きですし、行列に並んでまで食べることを厭いません。
並ぶと待たされるにもかかわらず、並んでまで食べたい。並んでいるお店は、待ってでも食べる価値があるほどおいしいに違いない、と多くの人が思っています。
ですから、何かの拍子に行列ができた店は、その行列がますますお客さまを惹き付けるようになります。つまり、「客が客を呼ぶ」状態になるのです。
これはここだけの話ですが、私はわざとお店に行列ができるように仕向けることがあります。
いえいえ、サクラを雇うということではありません。本当に行列ができてしまうのです。
それは、まずラーメンがおいしいことが前提ですが、店内の席を少なくしたり、注文を受けてから提供するまでの時間を長目にするのです。
ですから、私はコンサルティングのためにお店を訪ねると、店長に「あまり急いで出さないように」とアドバイスしています。
普通と逆ですよね。
一般的な経営感覚なら、商品を素速く提供することでお客さまの回転率を高め、売上を伸ばす。こう考えます。
しかし私は、わざとゆっくり出すことで、行列ができてしまうようにて、お客さまの渇望感を高めたほうが人気店になるよ、ということを指導しているのです。
特に、ランチタイムは慌てずにゆっくりと対応するように指導しています。
すると、「待ちくたびれて他のお店に行ってしまうお客さまが出てしまう」と店長は困惑します。
それで良いのです。今日、食べ損ねたお客さまは、必ず「こんどこそこの店で食べたい!」と思うようになりますから。
そうすることでネット上でも「今日はやっと念願のこの店に食べに来れました!」などと書き込んでくれます。
するとそれが拡散して、さらにファンを増やしてくれます。
―と、この話は、ここだけの話ですからね。
■オーナーに儲けていただくためのビジネスモデル
私はラーメンプロデューサーとして多くのラーメン店のプロデュースをしてきました。もちろん、コンサルティングも同時に行っています。
コンサルティングというと、身構える方もおられるかもしれません。コンサルティング料というのは、一般的に高額なことは確かです。
そのため、ラーメン店に投資してオーナーとしてリターンを得たいけれども、「藏本さんにかなり持っていかれるのではないだろうか」と心配されます。
しかし、ご安心ください。実は私は高額なプロデュース料やコンサルティング料で稼ぐというビジネスモデルを採用していません。
それは、皆さんがせっかくラーメン店に投資しようというときに、貴重な投資額を減らしてしまうようなことをしたくないからです。
最初の投資金額を良いお店作りのために有効活用できなければ、繁盛店を作ることが難しくなってしまいます。
それでは、私はボランティアでプロデュースやコンサルティングを行っているのかというと、そんなことはありません。
しっかりとビジネスとして報酬をいただいております。
それではどこに私のキャッシュポイントがあるのでしょうか?それは麺とスープの提供にあります。
私は、皆さんにラーメン店投資を成功してほしいですので、儲かるラーメン店を作るための設計図やノウハウを惜しみなく提供しています。
その代わり、私が指定するメーカーから麺とスープを仕入れてくださいとお願いしています。そのメーカーから皆さんのお店に麺やスープが納入されるたびに、たとえば麺1玉当たり5円がメーカーから私に支払われます。
皆さんからではありません。メーカーからです。
ですから、麺やスープの出荷量が減ることで、どの店の売上が下がったかすぐに分かります。
しかし、皆さんは私に直接ロイヤリティーを支払っていませんから、私が「売上が下がっているようなのでアドバイスに来ました」と言って現れると驚かれます。
「どうして分かったのですか?」と。
それくらい皆さんにとっては負担感のないビジネスモデルを採用しているのです。
しかし、お店の売上はしっかり把握していますから、ちゃんと必要なタイミングでアドバイスをすることができるわけです。
■ラーメンには3つの中毒性がある(低価格・手軽さ・満腹感)
それにしても日本人はラーメンが好きです。いや、近年は外国人もラーメンにハマり始めていて、日本を訪れたら必ずラーメンを食べなければ、という旅行者も多いようです。
株式会社フードリヴァンプの経営する「野郎ラーメン」では、ラーメンのサブスクリプション(定額前払い)を始めました。月額の8600円(税抜き)でラーメン食べ放題というシステムですが、このシステムが成立するほど、頻繁に食べているラーメン好きが多いのでしょう。
すでに国民食と言われて久しいラーメンですが、これはラーメンに3つの中毒性があるためだと考えています。
(1)リーズナブルであること
1食1000円以内で食べることができますし、安いところでは1杯500円で替え玉が無料なんてこともあります。トッピングを好きなだけ追加できるお店もありますし、有料のトッピングを追加しても1000円以内で収めることができます。
(2)素速く出てくること
注文してから実際に食べ始めるまでの時間が、一般的なレストランに比べるととても短いですね。お腹が空いているときはこの速さはとてもありがたい。ライバルと言えばカレーライス屋さんや牛丼屋さん、立ち食い蕎麦屋さんですね。
日本人はこうした素速く提供される料理が大好きです。
(3)なんといっても満腹感があること
ラーメンを1杯食べれば、よほどの大食漢でないかぎり、ほとんどの人は満腹感を感じるはずです。ラーメンの麺は小麦粉で糖質ですから、満腹感を得やすいのです。もちろん、人によって満腹感を得られる量には差があるのですが、その差はスープを飲む量で調整されます。
ラーメンにはこのような中毒性があり、中毒性があるということは、リピートしたくなるということです。
飲食店で最も大切なのはリピーターをいかに多く確保するかということですから、このラーメンの中毒性は強みです。
たとえばカツ丼や蕎麦にはこれほどの中毒性はありません。カレーライスは確かに中毒性がありますが、やはりラーメンほど頻繁には食べないのではないでしょうか。
そしてこの中毒性がある限り、日本人はラーメンを食べ続けてくれます。
日本人のラーメン好きは一時的なブームではありませんから、これからも長く愛され続ける食べ物だと言えます。
■外食は3つの選択肢しか思い浮かばない
これほどラーメンが好きな日本人ですが、このことは「さて、これから何を食べに行こうか?」と考えるときの選択肢にも表れます。
これは厳密にアンケート調査を行ったわけではなく、私の体験に基づくものですが、人は外出先で飲食店を探すときに、だいたい3つの選択肢しか浮かんでいません。
「昼は、ラーメンかカレーかカツ丼かな?」
「夜は、回転寿司か牛丼、あるいはラーメンかな?」
ラーメン、カレー、カツ丼。ラーメン、寿司、牛丼の組み合わせです。そしていつもラーメンが紛れ込んでいます。
もちろん、私が勝手に感じていることですから、絶対にラーメンは選択肢に入らない、という人もいるでしょう。しかし、この国では外を歩いていると、常に視界のどこかにラーメン屋さんが入ってきます。角を曲がるたびに新たなラーメン屋さんが目に入ります。
そのため、何か食べようと思ったとき、やっぱりラーメンを思い浮かべてしまうのです。ラーメンはそれほど選ばれやすい食べ物なのです。
藏本猛Jr(くらもと・たけし・ジュニア)
ラーメンプロデューサー。国際ラーメン協会代表(International Ramen Association CEO)1996年、父親の急死によって、27歳で父親の経営するゴルフ場の社長に就任。その後、ゴルフ場で売れ行きの良かった「ラーメン」に注目し、ラーメン店開業を目標に試行錯誤が始まる。簡単でおいしい、誰でも作れるスープを開発し、スープメーカーからの製品化を果たす。2010年に念願のラーメン店を東京に開業。2014年にラーメンプロデューサーとしての活動を開始する。2019年に国際ラーメン協会を設立。