なぜ視聴者は『24時間テレビ』をおだやかに見ることができないのか 根底にある「不信感」の正体

日本テレビによる毎年恒例のチャリティー番組「24時間テレビ47」が8月31日〜9月1日に放送された。

 昨秋に発覚した募金の着服問題を受け、同局は番組テーマを「愛は地球を救う」から「愛は地球を救うのか?」に変更。今年からメインパーソナリティーを廃止し、旧ジャニーズ事務所のタレントの出演が大幅に減るなど“異例”の放送となった。

 瞬間最高視聴率を記録したのは、物議を醸していたお笑いタレント・やす子による「全国の児童養護施設に募金マラソン」のゴールシーン。台風10号の影響で開催自体が危ぶまれる中、8月31日は日産スタジアムのグラウンドを周回し、9月1日朝からはメーン会場の両国国技館へと向かう形で行われ、最後はX JAPANのYOSHIKIらにねぎらわれる場面で25・4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。

 やす子の奮闘もあり、「マラソン児童養護施設募金」は番組終了時点で4億3801万円もの大金が集まった。チャリティー番組としては大成功と言えるだろう。

「今年の『24時間テレビ』は、募金の着服問題や毎年“メインパーソナリティー”として番組を盛り上げてきた旧ジャニーズタレントの大幅な出演減、台風の真っただ中でのマラソン企画強行などにより、例年以上の逆風が予想されていました。それだけに、視聴率や『マラソン児童養護施設募金』の額を鑑みれば、日テレとしては一安心といったところでしょう。やはり最大の勝因は当代屈指の好感度タレントであるやす子さんの担ぎ出しに成功したことではないでしょうか。それに加えて、台風の到来により外出を避け、家でテレビを見る人が増えたのもプラスに働いたかもしれません」

総合司会を務めたフリーの羽鳥慎一アナ

 とはいえ、近年ますます強くなっている同番組に対する批判が収まったわけではない。

 番組のエンディングでは、「くりぃむしちゅー」の上田晋也と同局の水卜麻美アナウンサーとともに総合司会を務めたフリーの羽鳥慎一アナが、「原点に立ち戻り、番組の意味を考え直し、チャリティーの本質を見つめ直すという決意と覚悟を持って臨みました」とし、「放送しないことでチャリティーが届かなくなってしまうところもある。継続することに意味があるのではないかという思いで、私たちは今年の放送を決断しました」と改めて放送の意義を強調した。だが、「募金の着服問題に対する批判を受けての発言だと思いますが、『フリーの立場である羽鳥アナに言わせるのはずるい』という意見も多いですね」とは前出の放送作家。

チャリティーマラソンを完走した「やす子」(写真:Pasya/アフロ)

■日テレの災害報道は信用できなくなる?

 さらに、かねて話題に上がっている、チャリティー番組をうたいながら出演者にギャラが支払われている件についてもこう言及する。

「募金総額については10月に詳細を発表するそうですが、“ギャラ問題”については相変わらず明らかにされていません。今回、やす子さんが『チャリティーマラソンのギャラ1000万円ってデマが飛び交ってるけど、一銭もいただいてないですよ!』などとXでコメント。YOSHIKIさんが同じくXでこれまでに出演した『24時間テレビ』はすべてノーギャラであることを明かしましたが、結果的に『じゃあ、他の出演者はどうなの?』『やす子やYOSHIKIが受け取らなかったギャラはどういう扱いになるの?』などギャラ問題がより注目を集めることになりました」(前出の放送作家)

 また、実業家の「ひろゆき」をはじめ、一部から、これまで同番組がずっと障害者に焦点を当ててきたにもかかわらず、現在パリで開催中のパラリンピックの中継をしなかったことに疑問の声が上がった。さらに、他局の情報番組の制作スタッフはこんな“矛盾”を指摘する。

「そもそも、テレビの報道番組や情報番組では、ずっと台風の猛威を伝えていて『不要不急の外出は控えてください』『命を守る行動をしてください』などと視聴者に注意を呼びかけていました。それなのに、報道機関でもある日テレが台風の最中にマラソン企画をやること自体、災害報道との兼ね合いという点では矛盾を感じます。『もう日テレの災害報道は信用できなくなる』という視聴者の声もある。もっとも、日テレはコロナ禍の緊急事態宣言下でも『24時間テレビ』の放送を強行したくらいですから、そのあたりはまったく意に介していないんでしょう」

 いくら番組の放送意義をアピールしても、視聴者が普通に抱く“疑問”が解消されない限り、番組への逆風が収まることはないだろう。

「日テレが『24時間テレビ』を放送することで広告収入など多額の収益をあげていることは多くの視聴者が知るところです。“チャリティーの本質を見つめ直す”“募金の使い道をクリーンにする”と本気で思っているのであれば、番組に関する広告収入や協賛金、番組制作費などの収支はある程度オープンにする必要もあるのではないでしょうか」(前出の情報番組スタッフ)

 来年以降は、視聴者の不信感を払拭する「24時間テレビ」に変わることができるか。注目したい。

(立花茂)

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