鳩山前首相の「CDベイビー裸踊り」
6月14、15日の日付で、鳩山由紀夫さんはご自身のツイッターに興味深い書き込みをしているのを見かけました。ちょっと引用してみます。
「新しい公共」が一人歩きを始めました。こんなに嬉しいことはありません。私に「裸踊り」をさせて下さったみなさん、有り難うございました。その私に続いて「裸踊り」をしようと立ち上がって下さったみなさん、有り難う。この伝播力が必ず社会を大きく動かすでしょう。 11:46 PM Jun 14th webから
この中の「裸踊り」という表現に関して、いろいろ問い合わせがあったのでしょう。翌日補足があり
「裸踊り」 答えはこの動画にあります。 http://bit.ly/aP3bhd 官だけでなく国民全体が公共を担う「新しい公共」の理念。私はその理念と共に、動画の中の青年のように、踊り続けていきたいと思います。 2:12 PM Jun 15th webから あなたと100+人がリツイート
ここで鳩山さんがリンクしている米国のオンラインショップであるCDベイビーの創設者、デレク・シヴァーズの講演「社会運動はどうやって起こすか?」はたいへん示唆的なもので、ご一覧をお勧めします。CDベイビーはブロードバンドIT(情報技術)でインディーズ・レーベルをシステム化し成功したもので、従来はメジャーレーベルのプロデューサーに気に入られるなどしなければ決してCDデビューできなかった全世界の若者に、低廉な価格でミュージシャンとして活動開始できるよう門戸を開きました。
これを辞任直後の鳩山さんがツイートしている、というところに、ちょっと注目したいと思うのです。旧来はメジャーレーベルの大プロデューサーに余計なゴマを摺り、しかもお偉い方の一言でデビューが不意になったかもしれない「メジャーデビュー」という世界。
これを「芸能界」と言い換えれば、実力者の意向1つで云々、イヤな話は僕もひとつならず身近に知っています。パワハラもセクハラもてんこ盛り見ました。
しかし、今や米アップルの携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」の中に膨大な楽曲情報が納まってしまう時代。完全に自由な競争状況で、力のある人、良いものを作る人間が、世に出てゆけるよう「解放区」を作れるはずです・・・むろん既得権益を持った人からは反発があるでしょう。でも勇気を持って1 人目が「無謀な裸踊り」を始め、最初にフォローしてくれる人があれば、それは第2のリーダーとしてたいへんな役割を果たすのだ・・・シヴァーズはそういう話をしています。それを鳩山さんはまるで「政権の遺言」のようにツイッターに書き込んでいるわけです。
「以前は、実力者のおメガネに掛からなければ、有力な人材も選挙に・・・」「かつては、有力者の意向に反したものは、有効な政策でも実施ベースには乗らず・・・」どうでしょう? いくらでも言い換えが利きはしないでしょうか? 鳩山由紀夫という人は、操舵を任された船が波に揉まれて動けなくなった時、ある責任を自分で取ったと思いますが、安易にマスコミがレッテルを貼るような暗愚な人と私は思いません。そこでできたこと、めぐり合わせによってできなかったこと、全部分かったうえでの選択であったと、こうした1つひとつから、私は分かる気がするのです。
選挙の度ごとに出てくる「なんとかチルドレン」という言葉。例えば「小泉チルドレン」「小沢チルドレン」。日本の政治に関して「チルドレンに『はーい』と手を挙げさせて多数決、という議会そのものがチルドレン的~幼稚である」と、欧米各国の有識者友人から軒並み言われ続けてきた私には、ある含意が見えるような気がしてなりません。誤読かもしれませんが。
そんなことを考えながら、もう一度最後に、鳩山さんのつぶやきを引用しておきます。
官だけでなく国民全体が公共を担う「新しい公共」の理念。私はその理念と共に、動画の中の青年のように、踊り続けていきたいと思います
この「新しい公共」の実現、決して平坦な一本道ではありません。しかし首相を退いた直後の彼がこれを個人としてツブヤいたところに、僕は彼の真実があると思うし、それは安易なマスメディア的論調で嘲笑するようなものではなく、よくよく私たちが個人対個人の問題として、考え直してよいものではないかと思うのです。それは「ツイッター」というメディアを日本政治に導入した鳩山さんが、彼自身このメディアで伝えようとしている、大切なポイントなのではないでしょうか?