JR東日本は、2023年3月18日のダイヤ改正で、2つの新駅を開業しました。千葉市の京葉線「幕張豊砂駅」と岩手県盛岡市の田沢湖線「前潟駅」です。これらの新駅には「イオン隣接」という共通点があります。「イオン隣接駅」が続々と増えているのには、どのような背景があるのでしょうか。 【イオン近すぎ!京葉線「幕張豊砂駅」の写真を見る】 幕張豊砂駅の新設にあたっては、イオンモールを運営する「イオンモール」と、千葉県・千葉市で構成する「幕張新都心拡大地区新駅設置協議会」が2018年4月に発足し、JR東日本と新駅設置に関する基本協定を締結。イオンモールを代表とする地元企業が建設費の半分を負担。残りを県と市とJRで折半しています。 前潟駅の場合は、2015年に地元町会とイオンモールで構成する「JR田沢湖線新駅誘致実現推進会」が設立され、2021年には盛岡市とイオンモールとの間で新駅整備に関する協定が結ばれています。協定には「地域の賑わい創出」や「新駅整備に関する寄付」といった項目が盛り込まれており、イオンモールが企業版ふるさと納税を活用して2億円を盛岡市に寄付し、約11億円の駅の整備事業費の一部に充てる形で新駅が整備されました。
イオンモールを「地域の社会インフラ」化
幕張豊砂駅と前潟駅は、どちらも自治体や住民の要望で新設する請願駅ですが、イオンモールも新駅の開設に大きな役割を果たしています。イオンモールと鉄道の連携が加速している背景について、同社広報部は「イオンモールが地域の社会インフラとしてご利用いただけることを目指し、官民問わず地域の事業者と協業し、各エリアで魅力を高める取り組みを推進しています」と話します。イオンモールの近くに駅ができるメリットについては「地域経済の活性化に寄与することで、円環的に当社の施設をご利用いただける機会も増加します」(同)としています。 駅がイオンモールに隣接することは、当然鉄道事業者にとってもメリットがあります。首都圏では幕張豊砂駅のほか、武蔵野線の越谷レイクタウン駅が「イオン直結駅」として知られていますが、同駅の2021年度の1日平均乗車人員は約2万4320人。内訳は定期外が11766人、定期利用が12553人となっています。定期利用と違って運賃の割引がない定期外客の比率は武蔵野線の駅の中でも特徴的に高くなっています。 イオンモールの利用者だけでなく、地域や事業者にもメリットがある「イオン直結駅」。次はどこにできるのか、気になるところです。