なぜETCを使わない? 高速で9割以上がETCを利用! 少数ながら存在する「使わない人」の事情とは

高速道路でのETC利用率が9割以上となるなか、それでもETCを利用しない人が少なからず存在します。どのような理由があるのでしょうか。

■なぜETCを利用しない人いる?

 高速道路を走行するときに欠かせないのが「ETC」です。正式名称は「電子料金収受システム」といい、高度道路交通システムのひとつとして、高速道路や有料道路を利用する際に料金所で停止することなく通過できるシステム。「Electronic Toll Collection System」の頭文字をとった略称で呼ばれています。

 日本では2001年にサービスが開始され、ETC割引や車載器購入の補助金制度なども後押ししてETC利用率は急速に上がっていきました。

 2022年9月時点でのETC利用率は94.1%と、高速道路を利用するほとんどの人がETCを利用。そのうち、より高度なサービスが受けられる「ETC2.0」の利用率は29.1%とこちらも徐々に浸透してきています。

 94.1%という高い利用率を誇るETCですが、逆にいうと5.9%の人はETCを利用せずに高速道路を走行していることになります。一体どのような理由があるのでしょうか。

 ETC車載器メーカーの担当者は「高速道路を使う機会が滅多になく、費用がもったいない、ETC割引の恩恵が良くわからないといった理由で装着しない人がいます」といいます。

 ほかにも、中古車を購入してすでに車載器は搭載されているものの、再セットアップをしていないといったケースでETCを利用しない人もいるようです。

 なお、中古車を購入してクルマのナンバーが変わったときには、車載器の再セットアップが必要になります。

 さらに、クレジットカード会社の担当者は次のように話しています。

「ETCを利用しない人のなかには、『カードを持っていない』『作れない』という事情の人がいます」

 ETCカードの多くはクレジットカードに付帯されており、諸事情によりクレジットカードが作れない人はETCカードも作れないことになり、ETCを利用できないというのです。

 なお、レンタカーの場合、ETCカードを持っていない人はカードもレンタルすることも可能。すべての営業所で対応しているわけではないので、事前の予約確認が必要です。

 高速道路を利用しないのでETC車載器の必要がない、またはそもそもETCカードを持っていない人はともかく、車載器とETCカードを持っているのにETCを利用しない人もいるといいます。一体どのような事情があるのでしょうか。

 まず考えられるのは、高速道路の通行料金の領収書や利用証明書がすぐに必要というケースです。

 仕事で高速道路を利用する人のなかには、会社や業務の依頼先などに到着したときに領収書を手渡しする人もおり、有人レーンで現金やクレジットカードで支払い、通行料の領収書を受け取るといった場合です。

 また、回送などで仮ナンバーを付けているクルマは、車載器とETCカードがあってもETCレーンは利用できず、これも有人レーンで支払うことになります。

 そして、走行データが残ることを避けるためにETCレーンを通らないというケースがあります。お忍びカップルや犯罪に絡むことなどが想定されますが、こういった事情がある場合、あえて現金で通行料を支払うという人もいるようです。

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 国土交通省は、近い将来、高速道路の料金所の有人ブースを廃止する方針を2020年7月に示しており、実際に首都高速は2022年3月から、阪神高速も同年5月からETC専用料金所の運用を相次いでスタートさせるなど、ETCを利用しないと高速道路が走行できなくなりつつあります。

 これは、「混雑の緩和」や「将来的な管理コストの削減」「料金収受員の人員確保が困難」などのほか、アフターコロナを見込んだ「料金収受員や利用者の感染リスクの軽減」などを目的としたものとされています。

 すべての料金所がETC専用になってしまうと、前出のようなクレジットカードを作れない人が利用できなくなってしまいますが、そういった人向けにデポジット(保証金)制のETCカードとして「ETCパーソナルカード」というものがあります。

 高速道路の通行料の支払いのみに利用できるカードで、デポジットは最低2万円からとなり、入金額の80%まで通行料として利用できます(別途、年会費が1257円)。

 デポジットは通行料金の支払いには使えず、指定した金融機関口座から1か月単位で引き落としされます。

 デポジットの下限額が残高不足になると一時的な利用停止になるなど、かなりハードルが高いのがネックなのですが、ETC専用化に合わせてデポジットの下限額を3000円まで引き下げる案が浮上しているようです。

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