なんと、日本の若者の「建築業界離れ」が深刻に…「労働時間は長く賃金も低い」厳しい実態

 国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し、大きな話題になった。50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割るという。 【写真】じつは知らない、「低所得家庭の子ども」3人に1人が「体験ゼロ」の衝撃!  ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。  ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。  ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。

国交省は生産性向上を解決策とするが……

 むしろ、建設業にとっての人口減少の影響は、就業者の減少という形で色濃く表れる。かねてより人集めに苦労してきた業界だ。少子化に伴う若い世代の減少スピードは速く、このまま“不人気職種”から脱することができなければ、採用難はさらにひどくなる。人手不足で受注したくてもできないということになれば、人口減少による国内マーケットの縮小を心配しているどころではなくなる。  国交省は建設業の人手不足に関する将来推計をしているが、建設業就業者はコロナ禍前の2018年度時点で、すでに前年度の331万人より約2万人少なくなっている。こうした状況に加えて、建設業も2024年度からの改正労働基準法の適用に向けて時間外労働の上限規制にも考慮しなければならない。  建築投資が2017年度と同水準と仮定した場合、製造業を下回る労働時間(5年で5%減少)とするためには新規に16万人増やす必要があるというのだ。さらに、推計は外国人労働者について3万人ほど少なくなると試算している。合計すれば、2023年度までに約21万人を確保しなければならない。  しかしながら、新規学卒者だけでは賄いきれない。総務省の人口推計によれば2021年10月1日現在の20歳男性人口は59万9000人だ。女性を含めても116万9000人である。各業種による“若者争奪戦”は激化の一途だというのに、建設業だけで20歳男性人口の3分の1を確保するというのは、さすがに無理がある。  そこで、国交省は解決策も示している。まずは、建設現場の生産性を年間1%向上させることで16万人分の人手を確保したのと同じ効果が得られるという。さらに新規学卒者を1万5000人採用し、それでも足りない分については、外国人労働者を約3万5000人受け入れるという案だ。生産性の向上には、点検の効率化、データの整備・利活用、修繕における新技術や新材料の活用が必要だと付け加えている。

労働時間は長く、賃金も低い

 だが、国交省の皮算用通りにいくとは限らない。国交省の別の資料によれば、働き方がなかなか改善しない実態が浮き彫りになっている。  建設業における2021年の年間実労働時間は1978時間で全産業の1632時間と比べて346時間、率にすると21.2%も長い。1997年度と2021年とを比較すると、全産業が225時間短縮したのに対し、建設業の短縮は48時間だ。  休日状況も建設業全体で見ると36.3%が「4週4休以下」となっている。「4週8休」の週休2日となっている人は19.5%に過ぎない。  技能労働者(建設工事の直接的な作業を行う人)の賃金も低い。2019年で比較すると、全産業の男性労働者が560万9700円なのに対し、建設業の男性技能労働者は462万3900円に過ぎない。  建設業の就業者は、政府による公共事業予算の抑制方針に伴い1997年の685万人をピークに減少した。2011年以降は建設投資が拡大する中でもほぼ横ばいをたどっており2021年の就業者数は482万人でピーク時と比べて29.6%少ない。技術者(施工管理を行う人)は1997年の41万人から2021年は37万人、技能労働者は455万人から309万人へとそれぞれ減った。  受注高が減った時代に他業種に流出した人たちが戻っていないのだ。加えて、「雇用環境が劣悪」との印象が定着し、新規に就業する若者が増えないのである。就業しても辞めてしまう人も少なくない。少子化で若者の絶対数が減っている上、仕事が肉体的にきつく、体力的に長く働けないというイメージがあることも若者を遠ざける要因となっている。とりわけ不足しているのが、若い施工管理技士だ。建設現場には不可欠な存在であり、このままベテランが引退していけば建物を建てることが難しくなる。

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