宮城県亘理町が郷土の歴史や自然、文化などを題材とした「亘理いろはかるた」を作製した。読み句や取り札の絵は、地元の子どもらの手による。句には東日本大震災で失われた風景も多く入り、遊びを通じて古里の記憶を後世に伝えていく。
かるたは「いろは歌」の47字に「ん」を加えた計48句で構成。読み句は地元の小中学生らから募集し、教諭らが参加した製作スタッフが選んだ。取り札の絵は亘理中、逢隈中の美術部の生徒や地元の愛好者が描いた。
題材は郷土料理の「はらこめし」や特産のイチゴなどの食べ物を始め、温暖な気候、亘理伊達家を開いた伊達成実など幅広い。
震災関連も多く、「忘れるな 津波が来たら 高台へ」の取り札には、津波に流された家や車と、必死にビルや高台に逃れる住民の絵を描いた。「響く 鳴り砂 吉田の浜に」は津波の影響で範囲が狭まった吉田浜の鳴り砂を、「家族連れ 楽しみながら 潮干狩り」は休止している鳥の海の春の風物詩を表した。
企画した町生涯学習課によると、かるたの製作は震災前にも検討されていたが、予算などの関係で立ち消えになったという。しかし、震災を経験して郷土の景観や文化を見直す機運が内部で高まり、昨年6月から準備を進めていた。
同課の担当者は「震災を題材とすることに迷いはあったが、遊びを通じて失われた財産を忘れずに語り継ぐことが大事だと思った」と話す。
かるたは町内の小中学校などに配布。16日から3月24日まで、JR亘理駅前の町郷土資料館でかるたの原画展が開かれており、会場で限定150組の先行予約を受け付けている。1組1000円で、先行予約は100円引き。連絡先は同館0223(34)8701。