ふるさと納税「違反自治体」に寄付殺到!返礼品競争が制御不能に

『週刊ダイヤモンド』1月26日号の第1特集は「バラマキ7000億円を取り戻せ!!最新税攻略法」です。自分で選んだ自治体に寄附をすることができる、ふるさと納税。所得税や住民税の還付・控除が受けられるほか、豪華な返礼品が注目されていますが、競争が激しくなるにつれその返礼品が年々過激になってきています。そこで政府は、昨年一部“違反”自治体に自粛を求める通知を送りました。(本記事は特集からの抜粋です)

「依然として一部団体で、返礼割合が高い返礼品をはじめ、ふるさと納税の趣旨に反するような返礼品が送付されている状況が見受けられます」「仮にこのような状況が続けば、ふるさと納税制度全体に対する国民の信頼を損なうこととなります」

 昨年4月、一部自治体で依然として続く過剰な返礼品競争をめぐって、自粛を求める通知を自治体に送った総務省。その後も過熱ぶりが一向に収まらない状況に業を煮やし、同年7月には(1)返礼割合が3割超、(2)地場産品ではない返礼品を送付している、(3)同年8月までに見直す意向がない――などとして、大阪府泉佐野市や佐賀県みやき町など12の自治体名の公表に踏み切った。

 名指しされた自治体では、総務省の動向に一段と神経をとがらせているかに思えたが、実際には笑いが止まらなかったようだ。なぜなら、返礼割合が高いなどと総務省が全国に広く「宣伝」してくれたことで、一部の自治体では寄付が急増したからだ。

 その後、ついに総務省は通知に反する行為を続ける自治体を、寄付金控除の対象から外す方針を決定。今年6月以降は、違反する自治体にふるさと納税で寄付をしても控除を受けられなくなるよう、今春までに法改正することになり、泉佐野市をはじめ名指しされた自治体からは怨嗟の声が上がった。

 一方で、控除対象を決める5月まではまだ猶予があるとみた自治体では、駆け込むようにして家電製品や金券を返礼品として大量投入したり、果ては監視の目をくぐり抜けようと「ゲリラサイト」を開設し、豪華な返礼品で寄付を集めるとすぐに消去したりと、やりたい放題だった。

総務省と自治体によるいたちごっこ

 さらに、通知の抜け穴を探るような手法も登場している。食品などの返礼品と合わせて、寄付額に応じてインターネット通販大手のアマゾンの「ギフト券」を送り、実質的な返礼割合が3割を超えるようにするといった手法だ。

 各自治体の返礼品を載せる一部のポータルサイトが、キャンペーンと称し自治体に知恵を付けて支援したこともあり、同手法は一気に拡散。昨年末に総務省が慌てふためき「不適切」と指導し、違反した自治体名を公表する結果となった。

 これまでもポータルサイト上では、「ポイント還元10倍」などとして、寄付額に応じて独自のポイントを期間限定で付与するといったサービスが横行しており、ギフト券を規制したところで、もはやいたちごっこの状態といえる。

 2000円を寄付するだけで豪華な返礼品を受け取れる制度は、納税者のみならず、返礼品を提供している地方の事業者にとっても恩恵が大きいが、制度のありようが問われているのも間違いない。

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