5月に観光庁が発表した2024年1-3月の旅行・観光消費動向調査の速報値では、日本人の国内旅行消費額は4兆7574億円で、前年同期比11.8%増と発表した。この額は、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年同期比でも13.0%増とされる。
しかし、大手旅行会社JTBが行った「2024年ゴールデンウィーク(4月25日~5月5日)の旅行動向」調査によると、今年の大型連休中に帰省を含め「1泊以上の旅行に行かない」と答えた人は73.6%。旅行に行かない理由には、「旅行費用が高い」「家計に余裕がない」といった経済的な理由をあげる人の割合が、去年と比べて多くなっている。
このように“旅行は贅沢”と、人々の意識が変化しているのも実情である。そのため日本人の国内旅行消費額が上がった背景には、インバウンド客をターゲットとした値上げや物価上昇による値上げも一因として考えられそうだ。
そこで今回は国内旅行消費額が増加した理由や背景について、トラベルジャーナリストの橋賀秀紀氏に解説していただいた。(以下、「」内は橋賀氏のコメント)
記事前編は「日本人の旅行格差が止まらない…ビジネスホテルですら『贅沢』になった『驚きの理由』」から。
費用重視でプランを下方修正の傾向?
観光庁のデータによると、旅行者数・前年同期比19.7%増の5038万人、消費額・前年同期比4.5%増の1万9657円となっており、宿泊旅行以外にも日帰り旅行の消費額や旅行者数も増加していることがわかる。
そういったデータから推察できるのは、海外旅行をあきらめた人が国内の宿泊旅行に、国内宿泊旅行をあきらめた人が日帰り旅行にシフトするなど、費用を重視した旅行プランに下方修正するケースが増えているという可能性だ。
「確かにそういう構造があるように感じます。いずれにしても海外から国内への旅行シフトは間違いなく起きています。『円安だからいま行かなくてもいいかな』という感じで、海外旅行へのモチベーションが減少傾向にある人も多いようです。また、経済的な理由から旅行全体の費用を抑えるか、同じ予算でも旅行日数を短くせざるを得ないという人も多いでしょう。
旅行に行きたいという強い意志がある人は、予算を考慮して旅行先を決めますが、旅行がそれほど好きでない人にとっては、価格の高騰が旅行を控える理由になることもあります。消費者の旅行したい欲求自体は急激には変わらないものの、費用や経済状況に応じて旅行の仕方は顕著に変わってきているのです」
日本発の海外航空券は安くならない
では今後の日本人の旅行消費の推移についてはどういった見解だろうか。
「例えばかつては、日本とタイ間の航空券は低価格でないと席が埋まらない状態でしたが、現在では航空券代を以前ほど下げなくてもすぐに席が埋まる状況にあります。これはタイ人の日本行きの需要が増加したことによるものです。今後も円安が続くことでインバウンド需要の好調は続くでしょう。そのため、日本発の海外航空券は安くはならず、海外旅行に行く日本人は増えにくいと予想されます。日本人の海外旅行者の数は少しずつ回復すると考えられますが、円安が続く限り高額な旅行費用がネックとなり、コロナ前の水準に戻るには数年かかるかもしれません」
おすすめの海外は東南アジア4カ国
夏休みシーズンも近いということで、最後に旅行費を抑えた旅行先としておすすめの候補を橋賀氏に挙げていただいた。
「国内旅行であれば、新幹線や電車は値引きされることも少ないので飛行機を利用して行く観光地がおすすめです。
海外旅行に目を向けると、現在日本より物価が確実に安い国はあまり多くありません。残念ながら、台湾はもうあまり安くなく、韓国は日本より高くなっています。アメリカやヨーロッパはいうにおよびません。他にも中国やインドなど安い国はありますが、行くのにビザが必要だったり、時間がかかったり、夏は非常に暑かったりするのでおすすめしにくい。となると現地の物価が安く、かつ日本からの飛行機代も比較的リーズナブルなインドネシア、ベトナム、フィリピン、マレーシアの4カ国。こういった東南アジア諸国はおすすめです。
例えば、今年7月26日~28日の期間での日本・成田空港-ベトナム・ハノイ空港のベトジェット航空の往復航空券は、3万1316円(6月18日現在)です。同期間の成田空港-那覇空港のジェットスター航空の往復航空券は3万1350円(同)となっており、実は沖縄旅行と同等の金額で海外旅行が可能なんです。現地の物価も日本より安いため、宿泊費や観光費も抑えて円安に負けずに海外旅行を楽しむことが出来ます。ぜひ検討してみてはいかがでしょうか」
(取材・文=逢ヶ瀬十吾/A4studio)