また、朝日のウソ記事、始まる。

九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)周辺の放射線測定装置(モニタリングポスト)のあり方を批判した朝日新聞の記事に、装置を設置した鹿児島県 や、原子力規制委員会が猛反発している。県は「国の指針に基づいた配置であり、問題はない。不安をあおる記事だ」と憤った。鹿児島県の設置状況を調べた。 (小路克明、高瀬真由子)

「あたかも(避難を)判断できないように報道をし、立地自治体に無用な不安を与えたことは、非常に犯罪的だ」

原子力規制委の田中俊一委員長は16日の定例会で、朝日の記事を批判した。

問題の記事は14日付朝刊に掲載された。

「モニタリングポストのうち、ほぼ半数が事故時の住民避難の判断に必要な放射線量を測れない」「事故時の住民避難の態勢が十分に整わないまま、原発が再稼働した」

鹿児島県の態勢の欠点を強調するものだった。

共同通信も同日午前、「監視装置、半数が性能不足」の見出しで、「監視態勢が不十分なまま、再稼働したとの批判が出そうだ」との記事を配信した。

モニタリングポストは空間の放射線量を計測する。原発事故が発生した場合、放射性物質が漏洩(ろうえい)していないかを知る目安となる。

では、鹿児島県の実態はどうか。

県は、67地点に計74台の測定装置を置いた。

川内原発から30キロ圏内でみると、線量が比較的高い毎時100ミリシーベルトまで測定できる装置を42台、線量が低い同80マイクロシーベルトや同10 マイクロシーベルトまで測れる装置を計29台設置している。「1マイクロシーベルト」は「1ミリシーベルト」の1千分の1だ。

高線量と低線量、双方が測れる装置を組み合わせて配置したのには、わけがある。低線量用の計測装置で高い放射線は測れない。逆に高線量用の装置で、低い放射線は正確には計測できない。

体重計で1グラムの重さを量れないことを想像してもらえばよい。高線量に対応する装置しかなければ、仮に原発から放射性物質がわずかに漏れた場合、把握できない恐れもある。

双方の装置を組み合わせ、万一の事故に備えるというのが、鹿児島県の言い分だ。

県原子力安全対策課の岩田俊郎課長は「わずかな線量の違いを把握できるのは低線量が測れる装置。住民避難には、高線量と低線量の測定装置をバランスよく配置することが必要だと考えている」と説明した。

■常識の備え

朝日の記事に、こうした鹿児島県の言い分は載っていない。5~30キロ圏の装置のうち、ほぼ半数が毎時80マイクロシーベルトまでしか測定できないことを取り上げ、「態勢が不十分」と批判した。

そもそも鹿児島県は、原子力規制委が決定した事故時の住民の避難指針を踏まえている。原発で重大事故が発生した場合、国が周辺住民に避難指示を出す際の指針だ。

福島第1原発事故を教訓に、原発から5キロ圏では即時避難、半径5~30キロ圏は毎時500マイクロシーベルトの放射線量が測定された場合、即時避難する。これは高い放射線への備えだ。

一方、比較的低い放射線にも備えなければならない。半径5~30キロ圏で毎時20マイクロシーベルトが1日続いた場合は、1週間以内の避難を指示する。

住民避難には、毎時20マイクロシーベルトといった低い線量を正確に把握することも必要となる。

原発事故を経験した福島県も、高線量と低線量対応の装置を組み合わせている。同県危機管理部の担当者は「現在のように線量の低い状態が続くときは、少しのレベルの変化をいち早く確認するのに、低線量の装置が活用できる」と述べた。

2つの装置の組み合わせは、原発事故への備えとして、専門家の間では常識といえる。だからこそ、規制委の田中委員長も強い言葉で非難したのだろう。

長崎大の高村昇教授(被ばく医療学)も「鹿児島県の対応に不備がある印象は受けない。測定装置は測定できる(線量の)範囲によって用途が異なり、うまく組み合わせて配置することが大事だ。自治体は住民に配置の意図を説明し、理解を得られればよいのではないか」と語った。

■5キロ圏は無視

鹿児島県の朝日報道への怒りは、これだけではない。

鹿児島県は、原発から5キロ圏内に高線量用の装置を16台配置する。毎時500マイクロシーベルト以上が測れる機器だ。

しかし、朝日、共同通信とも、記事中でこの5キロ圏の装置にはまったく触れなかった。

また、朝日の記事には「不十分だったり、未設置だったりする状態で再稼働するのは問題だ」とする規制庁職員のコメントも掲載された。

この規制庁職員は、産経新聞の取材に「一般論として『不十分であれば問題』と言ったことを再稼働とつなげられ、不本意だ。鹿児島県の対応は問題ないと考えている」と述べた。

朝日の記事をきっかけに、ネットでは「案の定、原子力ムラは福一事故から何も学べなかった」「こんな状態で再稼働なんてあり得ない」など、反原発の意見が噴出した。

原発・脱原発を論じることは必要だろうが、不安を扇動する記事は、冷静な議論を封じ込めるだけで、話にならない。

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