台風19号ではJR仙台駅西口の道路や地下街で、内水による浸水被害が発生した。「東北の玄関口」は大雨が発生するたびに道路が冠水し、川のような光景が広がる常襲地帯。商店や飲食店の関係者からは「またか」とぼやきが漏れる。仙台市は本年度、駅周辺の排水路整備事業に乗り出していて、雨水処理能力の増強を急いでいる。(報道部・小木曽崇)
市などによると、豪雨で駅西口の商業施設「EDEN(エデン)」付近の青葉通で約40センチの冠水を記録。駅東西地下自由通路や市地下鉄仙台駅、エスパル仙台本館の地下などにも雨水が流入、一部の地下店舗が一時的に水没した。商店関係者らは「駅前通に面した店舗が特に被害が大きかった」と振り返る。
さくら野百貨店仙台店跡地の北側にある金券ショップで働く佐々木啓勝さん(56)は「店頭に土のうを積んだものの、店内は約15センチ浸水した。毎年のように被害に遭う。行政は早く対策してほしい」と訴える。
市下水道調整課によると、駅前通には緩やかな傾斜がある。海抜は北から順に広瀬通交差点36.8メートル、さくら野跡地前35.5メートル、仙台ロフト前35.6メートル。青葉通交差点付近を底とする「くぼ地」状の地形になっており、水がたまりやすいという。
駅西口の排水路は主に昭和20年代に整備された。同課の担当者は「開発が進むにつれ、地表がアスファルトやコンクリートに覆われて土の露出が減った。結果、保水能力がなくなった」と別の要因も指摘する。
市も手をこまねいてはいない。本年度、既存の排水路に加え、もう一つ幹線水路を駅西口に整備する事業に着手。110億円をかけ、アエル付近から五橋公園を経由し、愛宕大橋付近の広瀬川に至る全長約3.8キロを敷設する。
使用開始は2026年度の予定。最大口径は2.60メートルで既存排水路の1.65メートルを上回り、一帯の排水能力は大幅に向上する。10年に1度の発生が予想される1時間当たり52ミリの大雨でも、駅西側ではほとんど浸水が発生しなくなるという。
同課の担当者は「仙台駅周辺は都市機能が集中し、商店もたくさんある」と語り、重点的に取り組む必要性を強調する。