東京電力福島第1原発事故で、福島県から横浜市に自主避難した生徒が転入先の横浜市の学校でいじめに遭い、総額150万円もの金銭を脅し取られたという事件。現在多くのメディアに取り上げられ、大きな話題となっています。無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』ではこの案件に関する学校側の責任逃れや言い訳を記した上で、いじめ防止対策推進法を学校側がまったく守ろうとせず、むしろ隠蔽を行っているとして厳しく糾弾、その対策を論じています。
守られないいじめ防止対策推進法
また悲しい事件が明らかになりました。原発避難の生徒がいじめで不登校になり、小学校の卒業式にも出られず、中学になった今でも不登校が続き、現在はフリースクールに通っています。報道によりますと、この生徒は小学2年だった平成23年8月、原発事故で福島県から横浜市に自主避難し横浜市立小学校に転校。その直後から、名前に菌をつけて呼ばれたり、蹴られたりするなどのいじめを受けました。また、小5のときには、同級生に「(東電から原発事故の)賠償金をもらっているだろう」と言われ、遊ぶ金として5万~10万円を計10回ほど、総額150万円ほど払わされたと証言しています。
父親は、何度相談しても一向に動こうとしない学校に不信感を持ち、弁護士に相談しながら、学校側やいじめたとされる同級生の保護者らと話し合ったが、改善せず、昨年12月に第三者委に調査を申し入れました。第三者委は、学校の対応について、一昨年に生徒側から相談を受けていたにも関わらず、適切に対応しなかったことを「教育の放棄に等しい」と批判しました。市教委に対しても、重大事態と捉えず、調査の開始が遅れ、生徒側への適切な支援が遅れたと指摘しました。生徒は中学1年の現在も不登校が続き、カウンセリングを受けていますが、今は、フリースクールに通い前向きに過ごし始めています。
いじめ防止対策推進法では、不登校や金品の被害があれば、学校は「重大事態」として速やかに市教委を通じて有識者でつくる第三者委員会で調査するよう定めています。しかし父親の話では、学校側は「お金が絡んでいるので警察に相談してください」と言うだけで同級生への指導はしてくれなかったといいます。また、市教委は「学校が調べたところ、被害者と加害者の証言が食い違い、いじめの認定ができなかった」と釈明しています。しかし、文科省生徒指導室は「自治体には、いじめと確定していなくても第三者委で調査するよう指導している。証言が食い違うからこそ、中立公平な第三者委が早く調査する必要がある」としています。
さらに、文科省生徒指導室の担当者は「今回のように、学校が重大事態と認識せず対応が遅れる例は全国的にある」と説明。速やかに第三者委を立ち上げられるよう、マニュアルを策定し、指導を強化する方針だということです。
なぜ学校側はいじめ防止対策推進法を守らないのか
これが、今の実態です。文科省は「学校が重大事態と認識せず」と言っていますが、これは明らかに「学校による隠蔽」でしょう。自治体に指導をしていても、このようなことが実際に起きているのです。いじめ防止対策推進法が守られていないケースが少なからず存在するということを、文科省自身が認めているならば、実効力を伴った対策が必要なのではないでしょうか。
道路に信号機を設置しただけでは、交通事故はなくなりません。違反者を罰したり、取り締まりを強化したり、具体的な対応をしなければ、改善していかないことは、誰でもわかっていることです。いじめ防止対策推進法も同じです。いじめ防止対策推進法を制定しただけでは、いじめはなくなりません。同じように、違反者を罰したり、取り締まりを強化したり、具体的な対応をしなければ、何の効果も発揮しないのです。
いくら現場の教師から「俺たちを信用できないのか」という声が上がったとしても、現に違反者がいるのなら、それに対処できなければいけないはずです。文科省も現状を認識しているのなら、より具体的な対応策を立ててもらいたいものです。
私達も、このいじめ防止対策推進法が、順守され、いじめ防止により効果があがるよう、今回の事件のように、隠蔽する学校・教師への処分を明確にするように、求めていきたいと思います。ぜひ、皆様のご協力をお願いいたします。
いじめから子供を守ろう ネットワーク
事務長 丸山秀和