沖縄では日本復帰以降、ダムなどの水源開発が進み、断水の心配もなくなった。県内の今年1月以降の降水量は平年比の6割程度だが、昨年の雨の“貯金”でダム貯水率は安定している。一方で、復帰から半世紀がたち、有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)の水汚染という新たな水問題が県民を悩ませている。県が負担する対策費は年々膨らみ、本年度は5億円以上になる試算だ。また現在、汚染がある河川からの取水を制限しているが、県は観光客の増加や天候次第での取水の制限解除も視野に、遅い梅雨入りに気をもんでいる。(政経部・東江郁香)
沖縄では、空梅雨や水不足で制限給水(断水)に悩まされた歴史がある。復帰を皮切りにダムや海水淡水化施設の整備が進み、1994年3月を最後に断水問題は改善された。
だが2016年1月、県の調査で、米軍基地周辺を流れる本島中部の河川や湧水のPFAS汚染が明らかになった。中には、那覇市など県内7市町村に水を供給する北谷浄水場の取水源も含まれていた。
県は沖縄防衛局の補助金で同浄水場にPFASを吸着する活性炭を導入。取水源の汚染水を避けるため、県独自で中部の河川からの取水停止・抑制など低減策を実施している。
今年に入り、PFAS値は調査で検出できない値まで減少させた。制限した分の水量は、北部のダムや稼働に高額を要す海水淡水化施設からの取水を増やして賄っている。
県によると、今年1月から今月10日までのダムや河川など取水源での降水量は、平年より大幅に少ない累計495・7ミリ(平年比63・2%)。昨年に平年より雨が多かったこともあり、13日時点の本島全11ダムの貯水率は85・4%で推移しているため、現段階で断水の心配はない。
ただ、少雨が続き渇水に陥ると、再び中部の河川からの取水量を増やさざるを得なくなる可能性があるという。県の担当者は「国の暫定目標値は下回るものの、取水の制限解除で県民に不安を与えるかもしれない」と危惧する。
環境問題に詳しい桜井国俊沖縄大名誉教授は県の対策を評価した上で、「取水を制限解除して県民に不安を与えないよう、早い段階で節水への協力を呼びかけるべきだ」と指摘。また、観光客は1日当たりの水使用量が県民の約3倍になるデータもあるとして、「観光立県の観点から、宿泊施設なども水問題を考える必要がある」と強調した。