宮城県南三陸町志津川で約90年続く老舗のみそしょうゆ醸造元「高長醸造元」店主の高橋長泰さん(58)が28日、津波に流されながらも奇跡的に見つけたタンクを使い、みその仕込みを再開した。「昔の味を取り戻したい」と意気込んでいる。
仕込みは、親類に当たる美里町の鎌田醤油で始めた。こうじ菌や原料の仕上げ方法は、志津川で造っていたときの伝統を守る。
高橋さんは「こんなに早くみそ造りを再開できるとは思わなかった」と笑顔を見せた。
高長醸造元は1918年創業。津波で自宅と店舗は流され、高橋さんは志津川小の避難所に身を寄せた。自治会長として、一時は1000人を超す町民をまとめた。忙しい日々が続き、店の再開を考える余裕もなかったという。
4月下旬、入浴サービスからバスで帰る途中、見慣れた緑色のタンクが目に入った。店で使っていたみそタンクだった。約200メートル流され、2階建て銀行の屋上に倒れていた。
「12個あったが、見つかったのは1個だけ。よくぞ残ったと驚いた」と高橋さん。もう一度、みそを造ってみようとやる気が湧いてきた。
震災から4カ月余りたった7月19日、タンクを降ろし、仕込みの準備を始めた。みその完成は11月の予定で、南三陸町の福興市で販売するという。
高橋さんは「南三陸町はまだ店を再建できる状況ではない。数年は美里町でみそを造り、再建の足掛かりにしたい」と話している。
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